アンケートの自由記述で本音を引き出すには?設問作成から集計・分析のコツを解説

05 2025.08

マーケティングリサーチ用語集

アンケートで「本当の声」を聞きたいのに、自由記述欄が空欄だったり、集計に手間取ったりしていませんか?自由記述は、設問の作り方と分析のコツさえ掴めば、選択式では見えない顧客のニーズや従業員の「本音」を発見できる「宝の山」になります。
この記事では、回答率を高める設問作成のポイントから、Excelやツールを使った効率的な集計・分析方法までを網羅的に解説します。


アンケートの自由記述で本音を引き出すには?設問作成から集計・分析のコツを解説

自由記述(FA)とは?基本と役割

アンケートを実施する際、回答者がより深く、そして具体的に意見を述べられるようにするのが「自由記述」形式の設問です。このセクションでは、自由記述の基本的な定義から、その目的や種類について解説します。

自由記述の定義と目的

自由記述とは、フリーアンサー(FA)やオープンアンサー(OA)とも呼ばれ、アンケート内の設問に対して選択肢を用意せず自由な回答を促す回答形式のことを指します。主な目的は、選択式の設問だけでは得られない、質的な情報を収集することにあります。
例えば、ある商品に対して「満足」と回答した人でも、その理由は「価格が安いから」「デザインが気に入ったから」「機能が優れているから」など様々です。自由記述は、このような選択の背景にある具体的な理由や、回答者の感情、潜在的なニーズを深く掘り下げるために用いられます。

一般的な自由記述の例

一般的な自由記述の例

自由記述の種類(文字入力・数値入力)

自由記述には、大きく分けて「文字入力」と「数値入力」の2種類が存在します。アンケートの目的に応じて使い分けることが重要です。

文字入力

意見、感想、理由などを文章で自由に記述してもらう形式です。回答者の考えや感情を詳細に把握したい場合に有効です。
例)
「当サービスをご利用いただいて、最も良かった点を具体的にお聞かせください。」
「改善してほしい点がございましたら、ご自由にご記入ください。」

数値入力

年齢、年収、利用回数など、数値を直接入力してもらう形式です。回答を数値データとして集計・分析したい場合に用います。
例)
「あなたの年齢をお聞かせください。」
「この1ヶ月で、当サービスを何回利用しましたか?」

選択式回答との違い

選択式回答(シングルアンサーやマルチアンサー)は、あらかじめ用意された選択肢から回答を選ぶ形式です。これにより、回答を定量的に集計しやすく、全体の傾向を素早く把握できる利点があります。
一方、自由記述は回答の自由度が高い分、一つ一つの回答がユニークであり、集計や分析に手間がかかるという特徴があります。しかし、選択肢という「仮説」に縛られないため、作り手が想定していなかった全く新しい発見や、顧客のインサイトに繋がる貴重な意見を得られる可能性を秘めています。選択式回答の弱点を補い、より深い顧客理解を実現するのが自由記述の役割です。

自由記述形式のメリット・デメリット

メリット

・回答者の本音や深層心理を把握できる
選択式では得られない、よりリアルな感情や考えが表れやすくなります。「なぜ?」という理由を深く掘り下げることで、顧客のロイヤリティを高めるヒントが得られます。

・想定外の意見や新たなニーズを発見できる
選択肢のみのアンケートでは、作成者が立てた仮説を以て選択肢を用意するため、作成者の予想の答え合わせしかできませんが、自由記述はアンケート作成者の「仮説」の枠を超えた、独創的なアイデアや、競合他社も気づいていないような潜在的なニーズを発見できる可能性があります。

・定量データだけでは分からない理由や背景がわかる
「不満」という定量的なデータに対し、自由記述で「価格」「サポート体制」といった質的な裏付けを与えることができます。これにより、より的確で効果的な改善策を立てることが可能になります。

デメリットと注意点

・選択肢形式より回答者負担が高まる
自由記述回答は選択肢形式より回答負担が大きくなります。アンケート内に自由記述回答の質問が多いと、途中でアンケートの回答を放棄されたりてきとうな回答をされたりする可能性があります。アンケート作成の際は回答者の負担を考慮し、目的に応じて自由記述形式の個数の調整や任意回答とするなどしましょう。

・データ集計に手間がかかる
選択肢形式の質問は回答結果の数値化が容易ですが、自由に記述した回答の集計は単純に数値化するのが難しく、数値化するためには1つ1つ回答結果を確認し、回答内容をカテゴライズするなどアフターコーディングが必要になります。
回答結果の要点をまとめて報告するなどする必要があるため、選択肢の集計をする場合と比べて時間や手間がかかります。

・回答を誘導しないように設問設計に注意が必要
質問文の中に肯定的な言葉や否定的な言葉を含めないようにしましょう。中立的で分かりやすい言葉を選び、質問の順序にも配慮するなど、慎重な設問設計が求められます。
悪い例:「私たちの新サービスの素晴らしい点について、ご自由にお書きください。」
良い例:「私たちの新サービスについて、ご意見をご自由にお書きください。」
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自由記述形式の活用シーン

理由「なぜ」を聞くとき

例えば、新しく開発を予定している商品Aについて事前に消費者にとってニーズがあるのか把握するために受容性調査を実施することにします。
受容性調査では、商品Aの購入意向を5段階評価などで聞くことはマストになりますが、併せて「なぜ買いたいor買いたくない」のかまでも把握します。そうすることで開発したい商品のコンセプトがしっかり伝わっているのか、どこに魅力を感じているのか、予想と反した回答などを得ることができ、開発を進める際の重要な情報になります。

状況「どのように」を聞くとき

ある商品の実態把握をするために商品Aを利用している人に対してアンケートを実施する場合、どのように使っているのか、どんな時に利用するのかなどを聴取する場面があります。
発売当初は20代女性をターゲットに販売していた商品が、男性の若年層では異なる使われ方をしていて別のニーズがあることが判明するなど、アンケート結果からは思わぬ示唆を得ることがあります。新たな発見は別確度からの売り方をしてみるなど、ビジネス領域を広げていくことに繫がります。

不満や意見を聞くとき

商品やサービスの評価をしてもらうためにお客様満足度調査などを実施している企業は多いかと思います。
不満点や意見などは、具体的な回答が集まりやすく顧客の声からの問題点を把握し、具体的な施策に落とし込むというサイクルを継続的に行うことがビジネス成功への近道になるでしょう。

回答率を高める!自由記述の設問作成のポイント

自由記述の設問は、回答者の負担が大きいからこそ、少しでも答えやすく、質の高い意見を引き出せるような工夫が不可欠です。ここでは、回答率を高めるための具体的なポイントを4つ紹介します。

質問の目的を明確にする(1設問1質問の原則)

まず最も重要なのは、その自由記述で「何を知りたいのか」という目的を明確にすることです。目的が曖昧なままでは、回答者も何を答えてよいか分からず、漠然とした回答しか得られません。そして、一つの設問で複数のことを聞こうとしない「1設問1質問」の原則を守りましょう。質問を分けることで、回答者は論点を絞って考えやすくなり、より具体的で質の高い回答に繋がります。
悪い例:
「この製品の良かった点、悪かった点、今後のご要望についてお書きください。」
良い例:
設問1「この製品を使用して、特に良かったと感じた点を教えてください。」
設問2「この製品を使用して、改善してほしいと感じた点を教えてください。」

回答しやすい具体的な質問文を心がける

抽象的な質問は回答者を困惑させます。「ご意見・ご感想をご自由にお書きください」といった漠然とした問いかけでは、筆が進まない人も少なくありません。できるだけ具体的に、回答者がイメージしやすいような質問文を設計することが大切です。利用シーンや特定の機能に言及することで、回答者は自身の経験を思い出しやすくなり、具体的なエピソードを交えた回答が期待できます。
抽象的な質問:「サービスについてどう思いますか?」
具体的な質問:「当サービスの〇〇機能を利用してみて、便利だと感じたのはどのような場面でしたか?」

回答例を提示して入力を促す

自由記述欄で何をどう書けばよいか分からない、という回答者の戸惑いを解消するために、回答例を示すことは非常に有効なテクニックです。回答例があることで、回答の方向性がイメージしやすくなるだけでなく、「このくらいの粒度で書けばいいんだな」という目安にもなります。ただし、回答例が回答を誘導しすぎないよう、複数の異なる視点の例を挙げることが重要です。
設問:「本日ご利用いただいた店舗について、気になった点を教えてください。」
回答:「待ち時間の長さ、スタッフの対応、店内の清潔感、商品の品揃え など」

ネガティブな質問で意見を引き出す

人は一般的に、満足した点よりも不満に感じた点の方が、具体的な意見として言語化しやすく、また「誰かに伝えたい」という欲求が強く働く傾向があります。この心理を利用して、あえてネガティブな側面に焦点を当てた質問をすることも有効です。AよりもBの質問の方が、回答者は改善点や問題点を具体的にイメージしやすくなります。商品やサービスの課題点を洗い出し、改善に繋げたい場合には特に効果的な手法です。
比較A:「当店のサービスについて、ご自由にご記入ください。」
比較B:「当店のサービスについて、もし不満な点がありましたら、ご自由にご記入ください。」

自由記述形式の効果的な集計・分析方法

自由記述で集めた貴重な「生の声」。これらを単に眺めるだけでなく、意味のあるインサイトを抽出するためには、適切な方法で集計・分析することが不可欠です。ここでは、代表的な4つの手法を紹介します。

1. Excelを活用した集計方法

最も手軽に始められるのが、ExcelやGoogleスプレッドシートを使った集計です。回答データを一覧にし、フィルターや並べ替え機能を活用して、特定のキーワードを含む回答を抽出したり、回答者の属性(年代、性別など)ごとに回答の傾向を見たりすることができます。この方法は、回答数がそれほど多くない場合や、大まかな傾向を素早くつかみたい場合に特に有効です。
・フィルター:「価格」という単語を含む回答だけを絞り込んで読む。
・並べ替え:回答者の年代順に並べ替え、世代ごとの意見の違いを確認する。
・関数(COUNTIFなど):特定のキーワード(例:「高い」「便利」)が何回出現したかをカウントする。

2. 数値データを定量化

数字でデータを取得した場合、下記の数値データを確認します。
平均値:複数のデータを全て足し上げた後、そのデータの個数で割った際に得られる数値
中央値:複数のデータを小さい順番で並べた時に中央に位置する数値
標準偏差:平均からのバラツキを表す数値
・最小値:全データの中で最も小さい数値
・最大値:全データの中で最も大きい数値

3. アフターコーディングによる分類と定量化

自由記述で得た回答データを選択肢に変換することをアフターコーディングと言います。回答数が多くなってきた場合や、より客観的な分析を行いたい場合に有効な手法です。
自由記述(テキストデータ)のうち内容が類似している回答をカテゴリーに分類し、選択肢化していくことで定性的なデータを定量的なデータに変換します。
例えば、ある食品を購入した理由について自由記述形式で回答してもらった場合、「価格」「味」「クオリティ」といった内容でざっくりカテゴライズしていくといった要領です。
自由記述を一つ一つ確認する必要があるため大変な作業になりますが、データがより見やすくなることに加え、一度カテゴリー分けしておくと2回目以降の調査時に選択肢として活用することもできます。

4. テキストマイニングによる可視化と傾向分析

テキストマイニングとは自由記述の回答内容を単語や文節ごとに区切り、各単語の出現頻度や傾向、相関関係などを分析する手法のことです。定量的なデータのみでは把握することができなかった商品に対してどんな意見が多いのか、潜在的なニーズは何かなどの有用な情報を視覚的にわかりやすく取り出すことができます。専用のツールを用いて実施することもあります。代表的なアウトプットとして「ワードクラウド」や「共起ネットワーク」があります。
・ワードクラウド:出現頻度の高い単語を大きく表示し、全体像を視覚的に把握できます。
・共起ネットワーク:どの単語がどの単語と一緒に使われることが多いか(共起)を線で結んで可視化します。これにより、「価格」という言葉が「高い」と結びついているのか、「手頃」と結びついているのか、といった文脈を理解できます。

まとめ

アンケートにおける自由記述は、選択式の設問だけでは得られない、回答者の本音や具体的な意見、想定外のインサイトを引き出すための強力な手法です。そのメリットを最大限に活かすためには、回答者の負担を考慮した上で、目的を明確にした具体的な質問を設計することが重要です。
集まった貴重な「生の声」は、アフターコーディングやテキストマイニングといった手法を用いて分析することで、商品開発やサービス改善、顧客満足度の向上に繋がる具体的なアクションへと結びつけることができます。
本記事で紹介したポイントを参考に、ぜひ活用してみてください。

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