目次
ユーザーインタビューを実施したものの、集まった大量の発言データを前に「どこから手をつければ良いのかわからない」と悩んでいませんか。ユーザーの貴重な声も、適切に分析し、次のアクションに繋げなければ意味がありません。
この記事では、ユーザーインタビューの分析でつまずきがちなポイントを解消し、初心者の方でも自信を持って実践できる具体的な分析プロセスとコツを、事例を交えながら分かりやすく解説します。
この記事では、ユーザーインタビューの分析でつまずきがちなポイントを解消し、初心者の方でも自信を持って実践できる具体的な分析プロセスとコツを、事例を交えながら分かりやすく解説します。

ユーザーインタビューの分析とは?重要性を解説
ユーザーインタビューの分析とは、単にインタビューで得られた発言を整理・要約するだけではありません。ユーザーの言葉の背後にある本音や、本人さえも気づいていないような深層心理、すなわち「インサイト」を発見し、プロダクトやサービスの改善、新規事業のアイデアといった具体的なアクションに繋げるための一連の活動を指します。このプロセスを通じて、チームはユーザーへの深い共感を形成し、データに基づいた意思決定を下すことが可能になります。
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ユーザーの声を「次のアクション」に繋げるための活動
ユーザーインタビューは、ユーザーの生の声を聞ける貴重な機会です。しかし、インタビューを終えただけでは、まだスタートラインに立ったに過ぎません。その後の分析活動が、インタビューの成否を分けると言っても過言ではないのです。優れた分析は、漠然としたユーザーの声から、具体的な課題やニーズを特定し、「次に何をすべきか」というアクションプランを明確にしてくれます。例えば、「この機能は使いにくい」という発言から、「なぜ使いにくいのか」「どのような状況でそう感じるのか」「理想的な状態は何か」を深く掘り下げることで、的確な改善案を導き出せるのです。
なぜ分析が重要なのか?3つの理由
インタビュー分析がなぜ重要なのか、理由は大きく3つあります。第1に「参照しやすさ」です。分析され、構造化された情報は、インタビューに参加していないメンバーも含め、チーム全体がいつでも簡単に情報を振り返ることを可能にします。第2に「アクションのしやすさ」です。分析を通じて課題やインサイトが明確になることで、「それで、どうする?」という停滞を防ぎ、具体的な次の行動へとスムーズに移行できます。そして第3に「認識の揃えやすさ」です。「Aさんはこう言っていた」「いや、Bさんは違うことを言っていた」といった個人の解釈のズレを防ぎ、チームとして一貫したユーザー理解を持つための共通基盤を築くことができます。
| 重要な理由 | 具体的な効果 |
|---|---|
| 参照しやすさ | チームの誰もが、いつでもインタビューの要点を振り返ることができる |
| アクションのしやすさ | 分析結果から、具体的な改善策や次の行動計画を立てやすくなる |
| 認識の揃えやすさ | チーム内でのユーザー理解のズレを防ぎ、共通認識を醸成できる |

ユーザーインタビュー分析の代表的な手法
ユーザーインタビューの分析には、先人たちが生み出した様々な手法やフレームワークが存在します。これらを活用することで、混沌とした情報の中から効率的にインサイトを見つけ出すことが可能になります。ここでは、特に代表的で実践的な3つの手法を紹介します。
| フレームワーク | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| KJ法 | 情報の構造化 本質的な課題の抽出 |
断片的な情報をグループ化し、関係性を図解することで全体像を把握する |
| プロセスマップ | 顧客体験の可視化 課題の特定 |
ユーザー体験を時系列のステップで整理し、各ステップでの課題を明らかにする |
| AEIOU | 情報の網羅的な分類 | 5つの観点(活動、環境、相互作用、モノ、ユーザー)から情報を多角的に整理する |
KJ法を使って情報を整理し構造化する
KJ法は、文化人類学者の川喜田二郎氏が考案したデータ整理手法です。インタビューで得られた発言や観察結果といった断片的な情報を一つずつ付箋などに書き出し、内容の近しいもの同士でグループ化していきます。それぞれのグループにタイトルをつけ、さらにグループ同士の関係性を図解することで、情報の全体像を構造的に把握します。個々の発言からは見えにくかった本質的な課題や、ユーザーニーズの全体構造を明らかにできます。
プロセスマップで顧客体験を可視化する
プロセスマップは、ユーザー体験を 認知 → 興味 → 評価 → 購入 → 利用 → 共有 の流れに沿って可視化する手法です。図のように、各フェーズでの 心理・行動・タッチポイント を並べて整理することで、ユーザーの体験全体を一望できます。
ユーザーインタビューでは、得られた 発言や気づき をこの流れに当てはめることで、「どの段階で何を感じ、どんな課題や迷いが生じているのか」を立体的に把握できます。体験全体の構造を捉えながら、改善すべきポイントや次の探索テーマを見つけるのに有効な分析手法です。
ユーザーインタビューでは、得られた 発言や気づき をこの流れに当てはめることで、「どの段階で何を感じ、どんな課題や迷いが生じているのか」を立体的に把握できます。体験全体の構造を捉えながら、改善すべきポイントや次の探索テーマを見つけるのに有効な分析手法です。
AEIOUフレームワークで多角的に情報を分類する
AEIOUは、情報を5つの観点から整理・分類するためのフレームワークです。それぞれの頭文字が「Activity(活動)」「Environment(環境)」「Interaction(相互作用)」「Object(モノ)」「User(ユーザー)」を表します。このフレームワークに沿ってインタビューデータを分類することで、抜け漏れなく、多角的な視点からユーザーを取り巻く状況を整理可能です。例えば、単にユーザーの発言(User)だけでなく、その行動(Activity)や、周囲の環境(Environment)、使っている道具(Object)などにも目を向けることで、より文脈に沿った深い理解に繋がります。

初心者でも実践できる!ユーザーインタビュー分析の4ステップ
具体的な分析手法を理解したところで、次はいよいよ実践です。ここでは、初心者の方でも迷わず進められるよう、分析のプロセスを4つのシンプルなステップに分けて解説します。この手順に沿って進めることで、体系的で説得力のある分析が可能になります。
| ステップ | 作業内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ステップ1 | 目的の再確認 | 分析の方向性を定めるために、インタビューの目的を明確にする。 |
| ステップ2 | テキスト化とファクト抽出 | 発言を客観的な事実として抜き出す。解釈を交えないこと。 |
| ステップ3 | グルーピングとインサイト導出 | ファクトをグループ化し、背景にある本質的な欲求(インサイト)を探る。 |
| ステップ4 | 統合と提言 | インサイトを具体的なアクションプランに落とし込む。 |
ステップ1:目的を再確認し、分析の軸を定める
分析作業を始める前に、まず「何のためにこのインタビューを行ったのか」という目的を再確認することが極めて重要です。例えば、「新機能のアイデアを発見するため」なのか、「既存機能の課題を特定するため」なのかによって、注目すべき発言や分析の切り口は大きく異なります。目的が曖昧なまま分析を進めてしまうと、方向性が定まらず、有益な示唆を得られないまま時間だけが過ぎてしまいます。プロジェクトの企画書などを見返し、分析の軸をしっかりと定めましょう。
ステップ2:発言データをテキスト化し、ファクトを抽出する
次に、インタビューの録音や録画データから、発言内容をテキストに書き起こします(ローデータ)。この際、Nottaなどの文字起こしツールを利用すると作業を大幅に効率化できます。テキスト化が完了したら、そこから「ファクト(事実)」を一つひとつ抜き出していく作業に移ります。ここでのポイントは、自分の解釈や推測を交えず、あくまでユーザーが発言した客観的な事実のみを抽出することです。「この商品は高い」や「登録ボタンが見つけにくい」といった具体的な発言がファクトにあたります。
ステップ3:ファクトをグルーピングし、インサイトを導き出す
ファクトの抽出が完了したら、KJ法などの手法を用いて、似た内容のファクトをグループ化していきます。例えば、「登録ボタンが見つけにくい」「メニューの階層が深い」「専門用語が多くてわからない」といったファクトは、「UIの分かりにくさ」というグループにまとめられます。このグルーピングされたファクトの塊を眺めながら、「つまり、ユーザーはなぜそう感じているのか?」「その背景にある本質的な欲求は何か?」を考え、インサイトを導き出します。先の例であれば、「ユーザーは、専門知識がなくても直感的に操作できるシンプルな体験を求めている」といったインサイトが考えられます。
ステップ4:インサイトを統合し、具体的な提言にまとめる
最後に、ステップ3で得られた複数のインサイトを統合し、ストーリーとしてまとめ上げます。そのインサイトに基づいて、「だから私たちは何をすべきか」という具体的な提言(アクションプラン)に落とし込みます。例えば、「直感的な操作性を求める」というインサイトからは、「専門用語を一般的な言葉に置き換える」「チュートリアル機能を実装する」といった具体的な改善案が提言できるでしょう。この提言こそが、インタビュー分析の最終的なゴールとなります。

分析の質を高めるための3つのコツ
分析のプロセスを理解するだけでなく、いくつかのコツを意識することで、アウトプットの質をさらに高めることができます。ここでは、特に重要な3つのポイントを紹介します。これらを心掛けることで、より深く、正確なユーザー理解へと繋がります。
コツ1:思い込みやバイアスを排除する
分析を行う際に最も注意すべきなのが、自分自身の思い込みや先入観(バイアス)です。私たちは無意識のうちに、「きっとユーザーはこう考えているはずだ」という仮説に合致する情報ばかりを集め、それに反する情報を無視してしまう傾向があります。これを防ぐためには、常に「本当にそうだろうか?」と自問自答し、客観的な事実に基づいて考える姿勢が重要です。好意的な発言に飛びついたり、自分にとって都合の悪い発言を切り捨てたりしないよう注意しましょう。
コツ2:矛盾した発言の中にこそヒントを見つける
インタビュー中、同じユーザーが矛盾した発言をすることがあります。例えば、「品揃えが豊富なのが良い」と言っていた数分後に、「商品が多すぎて欲しいものが見つからない」と漏らすようなケースです。このような一見矛盾した発言を安易に切り捨ててはいけません。むしろ、その矛盾の中にこそ、ユーザーの複雑な心理や潜在的なニーズ(インサイト)が隠されていることが多いのです。「品揃えの豊富さ」というメリットを享受しつつも、「探しやすさ」という課題を解決したい、という深層心理がそこには隠されています。
コツ3:チームで分析を行い、多角的な視点を取り入れる
分析作業は一人で抱え込まず、可能な限りチームで行うことをお勧めします。異なる役割やバックグラウンドを持つメンバーが参加することで、多様な視点からデータを解釈することができ、一人では気づけなかったような発見が生まれやすくなります。例えば、デザイナーはUIの観点から、エンジニアは実現可能性の観点から、マーケターは集客の観点から、それぞれ異なる気づきをもたらしてくれるでしょう。議論を通じて、より客観的で質の高い分析結果へと昇華させられます。

ユーザーインタビュー分析に役立つツール
効率的かつ効果的に分析を進めるためには、適切なツールを活用することも重要です。ここでは、分析プロセスの各段階で役立つ代表的なツールを紹介します。作業の負担を軽減し、より本質的な思考に時間を割くことができます。
インタビュー実施から分析まで一気通貫で行えるツール
ユーザーインタビューの実施から分析までをワンストップで行いたい場合は、Surveroidのようなセルフ型リサーチツールが便利です。500万人の母集団から対象者を抽出してオンラインインタビューを実施できます。
モニターを対象としているため、自社会員以外の潜在層や非顧客層へのアプローチができる点が魅力です。
参考:セルフ型アンケートツール|Surveroid(サーベロイド)
モニターを対象としているため、自社会員以外の潜在層や非顧客層へのアプローチができる点が魅力です。
参考:セルフ型アンケートツール|Surveroid(サーベロイド)
文字起こしを効率化するツール
インタビューの録音データを聞きながら手作業で文字起こしをするのは、非常に時間と手間がかかる作業です。AIを活用した自動文字起こしツール(例:Notta, Rimo Voice)を利用すれば、この作業を劇的に効率化できます。音声データをアップロードするだけで、高精度なテキストデータが短時間で生成されるため、分析の初期段階にかかる時間を大幅に短縮することが可能です。
参考:自動文字起こしサービス | Notta
参考:AI議事録 | Rimo Voice
参考:自動文字起こしサービス | Notta
参考:AI議事録 | Rimo Voice
オンラインホワイトボードツール
KJ法のように、付箋を使って情報を整理・グルーピングする作業には、MiroやFigJamといったオンラインホワイトボードツールが非常に便利です。物理的なスペースを必要とせず、チームメンバーとリアルタイムで共同編集が可能です。付箋の色分けや図形の描画、連携線の追加なども簡単に行えるため、思考を整理し、視覚的に分かりやすいアウトプットを作成するのに役立ちます。
参考:AI イノベーション ワークスペース | Miro
参考:FigJam:チーム向けのオンラインコラボレーションホワイトボード
参考:AI イノベーション ワークスペース | Miro
参考:FigJam:チーム向けのオンラインコラボレーションホワイトボード
インサイト管理ツール
ユーザーインタビューを継続的に実施していくと、過去のデータやインサイトが点在し、管理が煩雑になりがちです。Centouのようなインサイト管理ツールは、インタビューのローデータ、ファクト、インサイトを一元的に管理し、いつでも簡単に検索・参照できるようにします。これにより、過去の学びを資産として蓄積し、組織全体でユーザー理解を深めていくことが可能になります。
参考:Centou | チームのための育てるインサイトデータベース
参考:Centou | チームのための育てるインサイトデータベース

【事例紹介】ポイ活ユーザー理解を深めたインタビュー分析
ポイ活アプリ「ポケアン」では、サービス改善の検討に向けて、ユーザーの実態をより立体的に把握するためにオンラインデプスインタビューを実施しました。事前のスクリーニング調査をもとに、サービス利用に関して具体的なコメントを残していた3名を対象として選定。インタビューは進行・記録・深掘りの役割を分担しながら行い、ユーザーの発言の背景にある意図や文脈を丁寧に拾い上げました。
その結果、
・複数のポイ活サービスを併用しているユーザーが多いこと
・“UIの評価”にはアプリ本体だけでなくアンケート回答画面まで含まれていること
・社内で想定していたユーザー像と異なる価値観が存在すること
など、定量調査だけでは把握できない気づきを得ることができました。
今回の取り組みは直接的な改善施策ではなく、ユーザー理解の解像度を高めるためのプロセスとして実施したものです。少人数のインタビューでも、次の施策に向けた仮説づくりに役立つ具体的な示唆を得られることが確認できました。
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【インタビュー調査事例】AIを使って初心者でもインタビュー調査は簡単にできるのか
その結果、
・複数のポイ活サービスを併用しているユーザーが多いこと
・“UIの評価”にはアプリ本体だけでなくアンケート回答画面まで含まれていること
・社内で想定していたユーザー像と異なる価値観が存在すること
など、定量調査だけでは把握できない気づきを得ることができました。
今回の取り組みは直接的な改善施策ではなく、ユーザー理解の解像度を高めるためのプロセスとして実施したものです。少人数のインタビューでも、次の施策に向けた仮説づくりに役立つ具体的な示唆を得られることが確認できました。
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まとめ
本記事では、ユーザーインタビュー分析の重要性から、具体的な手法、実践的な4つのステップ、そして分析の質を高めるコツまでを解説しました。ユーザーインタビューの分析は、決して難しい専門技術ではありません。正しいプロセスといくつかのコツさえ押さえれば、誰でもユーザーの声を価値あるインサイトへと変えることができます。今回紹介した内容を参考に、ぜひ次のアクションに繋がる分析を実践してみてください。
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