2022年1月26日 更新

D.I.Y.リサーチ入門(設計編)4定性調査の流儀(1)

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定量調査に引き続いて、定性調査のトラディションについてご紹介したいと思います。

前回は、「定量調査の型」として、
・  記述型・相関型のサーベイ
・  因果実験
・  横断的調査と縦断的調査
を説明しました。

これらは、どのようなことを知りたいか/分析の方向性であると同時に、それによってデータの集め方、つまり調査のタイミング・対象の決め方や調査項目の組み立てが決まってきます。

そこで定量調査の「型」と表現したのですが、定性調査のトラディションは、「型」というよりも、「流儀」や「(分析)視点」といったほうがぴったりします。

定性調査を説明するとき、FGI(フォーカスグループインタビュー・座談会)、デプスインタビュー、エスノグラフィ…などといった手法を挙げることがあります。これらは定量調査における訪問面接調査とかオンライン調査アンケートにあたるものです。

ここでいうトラディション/流儀は、そうした個々の手法のことではなく、より基本的なアプローチの方向性、「どういう流儀・視点で物事をとらえるか」ということで、リサーチ課題を考えるとき知っておいた方が良い知識になります。

たとえば、デプス・インタビュー自体はどのトラディションに基づくアプローチでも利用される手法ですが、インタビュー内容や分析方法はトラディションによって変わってくる、ということになります。

定性調査の流儀1 個別の消費者を深く理解し、記述する

トラディションの1つ目は、「個別の消費者を深く理解する」というアプローチです。個別というのは1人のという意味で、最近の流行りではn=1とか言ってもいいかと思います。

「深く理解する」ために、探索的なインタビューをしたり、対象者に自分自身の行動や意識を改めて考えてもらったり、つぶさに行動を観察したり、といったふだんはしないような集中的な情報収集をして、対象者を理解しようとします。最終的にはインサイト、つまり消費者に対するよく考えられたアイデアを発見することが目標になります。

マーケティング・リサーチの定性調査では、このアプローチが多くを占めているので、流儀1はなじみがあるアプローチだと思います。

流儀2 消費者の行動を社会集団や文化状況と結びつける

「社会集団や文化状況と結びつける」というと難しいことのように感じますが、ファッションや映画のような商品を考えると、ヒット商品の分析の際たくさん行われていることです。

「コロナ禍からの解放に向けて、あるいは解放に向かいたいという気持ちを受けたかのような、アーバンリゾート調やサファリテイストのアイテムにトレンドの兆しがあります。」(https://oceans.tokyo.jp/article/detail/30299)

「『君の名は。』がヒットした要因・・・「徒然草」や「平家物語」の冒頭などのように、日本人には「無常観」と呼ばれる精神的基盤が存在する。」(http://seishun.style/column/2053/)

 これらは調査結果に基づく分析ではありませんが、社会や文化の状況と消費者の行動を結び付けて説明する、こうした仮説をリサーチで探索・検証するアプローチです。

ファッションや映画のような商品に限らず、日用品でも、単に必要性だけで買うのではなく、楽しみや文化的な好みに基づいて買い物や商品選択をするという側面もあります。そう考えると、このようなアプローチの調査も広く利用可能性があると思います。

流儀3 通説や常識とされていることを覆す

「常識をくつがえす」という分析アプローチは、分析者にとってかなりやりがいのある、魅力的なものではないでしょうか。世の中の「常識」にたいした根拠がないということはありがちなことです。

例えば昔は「乳製品のパッケージに赤色を使うのは血液を連想させるからよくない」という常識?があったようなのですが、コンビニに行けば、今はこの常識が覆されているのがすぐわかります。

このアプローチは、たいてい「常識」がどのように形成されたのかという歴史をたどるデスクリサーチと、現実と「常識」が必ずしも一致しないことを示すことによって行われます。

ちょっと例としては適切でないのですが、「広告はセールス」という常識と、それが変わっていく歴史を次の記事で読むことができます。 https://www.advertimes.com/20190731/article296546/

なお、流儀を1つ1つ紹介していますが、実際のリサーチ・プロジェクトでは、複数のトラディションのアプローチを併用するということもよくあることといえます。

定性調査のトラディションについて、次回につづきます。
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