定性調査の流儀
定性調査のトラディションについて、前回は次の3つについて示しました。
1 個別の消費者を深く理解し、記述する
2 消費者の行動を社会集団や文化状況と結びつける
3 通説や常識とされていることを覆す
現実や変化、物事の間の因果関係について数字・実験を使って客観的に表すという定量調査のアプローチと比べると、その違いがわかると思います。今回は引き続き定性調査のトラディションをもう3つご紹介します。
1 個別の消費者を深く理解し、記述する
2 消費者の行動を社会集団や文化状況と結びつける
3 通説や常識とされていることを覆す
現実や変化、物事の間の因果関係について数字・実験を使って客観的に表すという定量調査のアプローチと比べると、その違いがわかると思います。今回は引き続き定性調査のトラディションをもう3つご紹介します。
社会的・倫理的な問題点を明らかにする
単に言えば、商品やサービスに、意図しなくても「社会に悪影響がある」とか「不公平がある」とか「不正な点がある」としたら、それを暴き、直していこうという視点です。
というと、マーケティング・リサーチにはあてはまらないのではないかと感じるかもしれませんが、SDGsやそれに基づくマーケティングが叫ばれている現在、実はとても必要とされているアプローチのように思います。
また、最近注目されているテーマとして、AIやコンピュータ・アルゴリズムを使ってサービスやマーケティングが展開されるときに、その仕組み自体が、社会的な差別や不公平を再生産してしまう問題があります(Amazonの採用システムやgoogleの画像ラベリングが有名な例)。
アルゴリズミック・バイアスと言われるこうした問題も、オンライン広告・コミュニケーションの適切なあり方なども含めて、マーケティング・リサーチのテーマとなってくるのかもしれません。
というと、マーケティング・リサーチにはあてはまらないのではないかと感じるかもしれませんが、SDGsやそれに基づくマーケティングが叫ばれている現在、実はとても必要とされているアプローチのように思います。
また、最近注目されているテーマとして、AIやコンピュータ・アルゴリズムを使ってサービスやマーケティングが展開されるときに、その仕組み自体が、社会的な差別や不公平を再生産してしまう問題があります(Amazonの採用システムやgoogleの画像ラベリングが有名な例)。
アルゴリズミック・バイアスと言われるこうした問題も、オンライン広告・コミュニケーションの適切なあり方なども含めて、マーケティング・リサーチのテーマとなってくるのかもしれません。
裏の意味をさぐる
「裏」というのは悪い意味ではなくて、たとえば「ベンツ」=「お金持ち」というような象徴的な意味のことです。誰にとってもそうか、というとそう簡単ではなく、ベンツユーザーにとっては、AクラスとGクラスの対比を考えてその意味合いも変わってきそうですから、人や状況によっても異なることがわかります。
このように考えると、例えば、スーパーの棚に自分の会社の商品と競合の商品が並んで置かれているとき、そのパッケージを対比してどんな意味合いが消費者に伝わっているのか、という問いがたてられます。
この「意味をさぐる」アプローチは、ブランドや広告、商品パッケージとその要素の分析にとても親和性があります。ことばやイメージが、特定の消費者にとってどんな記号・象徴として機能しているのか、逆に混乱をもたらしているのか、といったことを明らかにします。
あるいは、店舗のデザインについて、空間の要素やその配置が利用者に何の象徴として受け取られ、どのような顧客体験を生んでいるのか、といったリサーチ課題もこのアプローチとなりえます。
このように考えると、例えば、スーパーの棚に自分の会社の商品と競合の商品が並んで置かれているとき、そのパッケージを対比してどんな意味合いが消費者に伝わっているのか、という問いがたてられます。
この「意味をさぐる」アプローチは、ブランドや広告、商品パッケージとその要素の分析にとても親和性があります。ことばやイメージが、特定の消費者にとってどんな記号・象徴として機能しているのか、逆に混乱をもたらしているのか、といったことを明らかにします。
あるいは、店舗のデザインについて、空間の要素やその配置が利用者に何の象徴として受け取られ、どのような顧客体験を生んでいるのか、といったリサーチ課題もこのアプローチとなりえます。
少数のデータから客観性・妥当性のある説明を導く
定量調査で統計的にまとめられる以外のことについても、確からしい事実や説明を求めていく方向性のアプローチです。
このアプローチによくみられるのは、既存の定量調査で使われる変数や仮説・モデルが適切なものなのかを、個々の消費者の言葉や行動にたちかえって、再検討することです。
例えば、消費者とブランドの関係が、認知・使用・ロイヤリティといったファネルで十分捉えられているのか、という問題意識があった場合、消費者のブランドに対する意識や利用行動を細かく調査し記述するところからはじめて、関係性を説明する言葉やモデルをあらためて作り上げていきます。(事例:Susan Fournier 1998 “Consumers and Their Brands: Developing Relationship Theory in Consumer Research”)
このアプローチでは、結論の客観性・妥当性を担保するために、複数のデータ・研究結果を突き合わせるなどの手続きが重視されます。
また、少数のケーススタディから因果関係についての結論を客観的に導くため集合論などの数学的手法を使う、質的比較分析(QCA)という手法も最近はよく知られるようになっています。
このアプローチによくみられるのは、既存の定量調査で使われる変数や仮説・モデルが適切なものなのかを、個々の消費者の言葉や行動にたちかえって、再検討することです。
例えば、消費者とブランドの関係が、認知・使用・ロイヤリティといったファネルで十分捉えられているのか、という問題意識があった場合、消費者のブランドに対する意識や利用行動を細かく調査し記述するところからはじめて、関係性を説明する言葉やモデルをあらためて作り上げていきます。(事例:Susan Fournier 1998 “Consumers and Their Brands: Developing Relationship Theory in Consumer Research”)
このアプローチでは、結論の客観性・妥当性を担保するために、複数のデータ・研究結果を突き合わせるなどの手続きが重視されます。
また、少数のケーススタディから因果関係についての結論を客観的に導くため集合論などの数学的手法を使う、質的比較分析(QCA)という手法も最近はよく知られるようになっています。
まとめ
前回、今回で紹介した定性調査のトラディションは、「消費者理解のための定性的マーケティングリサーチ」(ベルク他、2016)という教科書にある次の6つ−実存主義的現象学/解釈学/ポストモダン/批判理論/記号論/新実証主義−について、私なりに理解できる範囲で簡単に説明したものです。
言いたいことは、定性調査を行うときに、必要に応じてこれらのアプローチを活用しようということです。どの(1つまたは複数の)アプローチを採用するかによって、欲しい情報やどんなインタビューをしたらいいかが決まってきます。
上記の6つのトラディションは一般に定まったものではないですし、一般的な定性調査/質的研究のトラディションというよりは、マーケティング・リサーチ寄りのものになっていると思います。
私の理解や説明が不十分・不適切なところも多々あると思いますので、アカデミックなところからきちんと勉強したい方は、ぜひ原典や文献にあたってみてください。
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言いたいことは、定性調査を行うときに、必要に応じてこれらのアプローチを活用しようということです。どの(1つまたは複数の)アプローチを採用するかによって、欲しい情報やどんなインタビューをしたらいいかが決まってきます。
上記の6つのトラディションは一般に定まったものではないですし、一般的な定性調査/質的研究のトラディションというよりは、マーケティング・リサーチ寄りのものになっていると思います。
私の理解や説明が不十分・不適切なところも多々あると思いますので、アカデミックなところからきちんと勉強したい方は、ぜひ原典や文献にあたってみてください。
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本記事を運営している株式会社マーケティングアプリケーションズはセルフ型アンケートツールの「Surveroid(サーベロイド)」をご提供しております。今回の記事では定性調査にまつわるアプローチ方法を記載致しましたが、定性調査と定量調査は組み合わせて実施するとデータに説得感が増します。定性的に得たデータが定量的に裏付けされるのかなど検証にも使っていただけますので、定量調査を検討されている方はこちらよりお問い合わせいただけますと幸いです。
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