2022年11月16日 更新

調査の型(トラディション)とは?調査設計が上達する近道を紹介-D.I.Y.リサーチ入門(設計編)2

gettyimages (2017)

前回の記事では、調査目的の考え方について書きました。
調査目的とは、
1)結果を何に使うか
2)そのために何を調べるか
ですが、とはいってもアンケートでどんなことが調べられるか知らなければ、「何を調べるか」の部分は考えるのが難しいです。したがって、アンケートのいろいろな型やパターンを知って、どんなことをどのように調べることができるのか、知識・情報として蓄えておく必要があります。調査のさまざまな「型」のことを「トラディション tradition」とも呼びます。このトラディションは伝統という意味ではなく、「型」ややり方、流儀というような意味です。

アンケートの柔軟性

ちなみに、「どんなことが調べられるか」という観点からは、アンケートとはとても柔軟な測定ツールだ、ということができます。アンケートは、面接や電話のようにインタビューアがいる(他記式、interview)にせよ、郵送やインターネットのように対象者が直接回答する(自記式、self-administrator)にせよ、人を介して調査・測定をします。この、「人」という非常に便利で柔軟なメディアによって、アンケートではいろいろなことを柔軟に調べることが可能です。

生活者の情報を簡単に得られる

例えば、「ある人が10年間に何台自動車を買ったか」を調べたいとした場合、やり方としては、頭にビデオカメラを10年間設置して、行動をすべて記録するとか、クレジットカードや車検の過去10年間の履歴を集計するとか。しかし、これらは大変な作業になります。これに対して、アンケートで単に「あなたは過去10年間に何台自動車を買いましたか」と聞けばごく簡単に答えが得られます。

簡単に答えが得られるのですが、回答者が思い出せなかったり、勘違いしたり(11年前に買った自動車を含めてしまったり、自分ではなく家族が買った自動車を含めてしまったり、とか)、あるいは答えるのがめんどうになって適当に答えてしまう、といったことがある、というアンケート特有のデメリットはあります。しかしながら、この例の場合は、アンケートを通じてある程度正確な情報を簡単に得られそうです。

実態だけでなく意識も調査できる

そればかりか、アンケートでは「その人が現在自動車を新しく買いたいと思っているか」というようなことも調べることができます。このような問いは、常識的には機械的な測定登録・履歴情報からデータを得ることはできません。このようにアンケートでしか調べられない問いを意識調査といい、また先の例のように別の方法で確かめられるものを実態調査といいます。

アンケートは、このようにいろいろな実態を容易に調べられ、かつ人の意識についても調べることができる、という便利で柔軟な特徴があり、このためにとてもたくさんの目的で活用されている調査方法になっています。

アンケートの型の重要性

少し脱線しましたが、アンケートの型の話に戻ります。アンケートの型は細かく分けて考えれば無数にあるといえ、そのすべてを知ることは困難ですが、なるべくいろいろな型を知っていると、いろいろな目的や設計の調査が考えられるようになります。したがって、どんなアンケートが行われているのか、過去の文献や記録をいろいろ下調べしておくことは大変重要です。

また、過去のアンケートには良くできたものも、うまくいっていないものをありますから、下調べの中で批判的に吟味し、良い型のアンケートを集めて参考にすることが大事です。もちろん、過去に参考にできるアンケートがないようなテーマで調査をすることもありますから、その場合は新しい型を発明・創造する必要がでてきますが、その場合にも、実際には過去の型を手直ししたり組み合わせたりして作り出す、ということがほとんどだと思います。

アカデミックな調査研究では、その目的上の要請から、過去にオーソライズされた型(トラディション)を調べ上げて、それに従うことがかなり求められます。しかし、実務目的のDIYリサーチャーは、とりあえずの手持ちの材料(型)を目的に応じて自由に組み合わせ、それが自分(たち)の役に立てばよいと考えて、調査設計をすすめていきましょう。

ちょっと前置き的な話が長くなりました。次回は定量調査の型についてご紹介します。

サーベロイドでアンケートをしよう!

今回はアンケートの型にちなんだ話をしました。過去に「アンケート調査票の作り方は?例(テンプレート)や良い例・悪い例を公開」という記事も挙げておりますので、こちらもご確認ください。
マーケティング部署に所属する方や、営業で数字を根拠に語りたいなど、自分でアンケートを実施できる「surveroid(サーベロイド)」を使って是非リサーチをはじめてみましょう!
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