D.I.Y.リサーチ入門(設計編)3定量調査の型

22 2024.01

DIYリサーチ

D.I.Y.リサーチ入門(設計編)3定量調査の型
有用な調査を設計するには調査目的を明確にすることが必要で、その調査目的を考える中で、「何を調べるか」(リサーチ課題)を決めるにはリサーチの型(トラディション)を知っていたほうがよい、というところまで前回話を進めました。

アンケートについては、まず定量/定性という分類ができると思います。アンケートの多くは定量的な内容、つまり結果を平均や比率にまとめることを目的としたものになっています。

サーベイと実験

定量的なアンケートは、大きく分けると2つの型があります。1つ目は、世の中の知りたい物事を客観的な数字としてあらわすもので、まさに調査といってもいいのですが、ここでは「サーベイ」ということにします。Surveyのsurはsurroundのsurで、veyはviewと同じ語源ですから、周りを見回してみるというようなニュアンスです。

サーベイはさらに2つに分けられます。「物事や人の数がどれだけあるか数えるもの」と「2つの物事の間の関係の有無と強さを調べるもの」です。後者は、「2つの物事の傾向を調べるもの」と言い換えられるかもしれません。前者を「記述型」、後者を「相関型」と呼びます。

記述型調査で得られる結果の典型的な例は、「日本の20歳以上の人における当社の認知率は〇〇%である」「当社商品購入者の平均購入金額は〇〇円である」というようなものです。

相関型調査で得られる結果の典型的な例としては、「当社商品の選択率と住宅の広さには強い関連がある」「顧客満足度と関連が強い要素は、窓口の対応の良さ、次いで待ち時間の短さである」といったものがあげられます。

定量調査のもう一つの型は、実験(test)です。「実験」は辞書を引いてみると「理論や仮説が正しいかどうかを、人為的な操作により実地に確かめてみること。」にあります。「操作」というのがわかりづらいですが、アンケートの文脈では、何かを見せたり使ってもらったり、対象者に「刺激」を与えることを言うと思ってください。刺激に対する反応によって、仮説を検証するというのが実験になります。

実験の例としては、試食アンケートなどがあげられます。新商品と、既存品をわからないようにして試食してもらって、それぞれの評価をアンケートで聞く、というような簡単なものをイメージしてください。

この場合、刺激が新商品と既存品、操作は「わからないようにして試食してもらう」ところです。そして、検証したい仮説は「新商品の方が既存品より評価が高い」ということになります。

まとめると、定量調査の型はこのようになります。

A サーベイ
 A-1 記述型調査
 A-2 相関型調査
B 実験型調査


1つのアンケートやリサーチ・プロジェクトが必ずどれか1つの型にあてはまる、ということではなく、複数の型がその中に含まれているということはよくあります。これは、定量的なアンケートの中に定性的な項目があったり、定性的なアンケートの中に定量的な項目があったりすることと同じです。

それでも、調査目的によってどの型の定量調査を採用するか意識しているということは、調査を設計するときにとても重要なことです。というのは、この型によって、どのように回答者の集め方をするか、集まったデータをどのように分析するか、ということが変わってくるからです。

したがって、目的に応じた型、それに紐づいたサンプリング手法や分析手法を知っておく、あるいは調べておくことが、効率的に効果的な調査を設計するノウハウになります。

横断調査と縦断調査

さて、定量調査の型について、もう一つ別の視点を挙げておきたいと思います。それは、1回だけの調査か、時間をおいて複数回行う調査かということです。前者のことを断面調査、横断調査、クロス・セクショナルなどと呼び、後者のことを縦断調査、longitudinalといいます。

先ほどの型の説明では、ほぼ1回だけの調査(横断調査)をイメージしていましたが、縦断調査は「時間をおいて複数回実施することによって知りたい情報を得る」というものになり、目的としては「変化の把握」や「調査間にあったイベントの影響を調べる」といったことに対応します。

縦断調査は、さらに時系列調査パネル調査という型に分けられます。時系列調査は同一条件の母集団から時間を置いてサンプリングするもので、これを定期的に続ける場合「定点調査」と言ったりします。パネル調査は、「オンライン調査のパネル」というときの「パネル」と混同しないでほしいのですが、「同じ対象者を追跡して複数回調査を行う」ものです。

時系列調査は母集団全体がどう変化したかがわかるのに対し、パネル調査はサンプルの一人ひとりの変化を把握することを目的にしています。

例をあげてみましょう。あるイベント、例えば「広告」とします。この前後でブランドの認知率がどう変わったかを調べたい場合は、時系列調査を使います。このときパネル(追跡)調査にしないのには理由があります。パネル調査の2回目は「1回目に答えた人」が母集団になりますので、母集団自体が認知率を調べたい集団とは変化してしまっています。特に、もし認知率を調べる時にブランド名を挙げて知っているかどうかを聴いてしまったら、そのことによって回答者はブランド名を覚えてしまうかもしれません。

逆に、純粋な広告の効果を測りたい場合、パネル調査を使った方が有効な場合もあります。時系列調査だと、たとえ認知率が上がったとしても、それが広告の効果によるものか、それ以外の要因によるものかわからないということが起こりえます(広告をしなくても上がったのかもしれない)。

このとき、パネル調査の1回目の回答者を認知率が同じになるように半分に分けて、一方にだけ広告を露出するというような「操作」ができれば、2回目の認知率の差は広告の効果だとみなすことができます。これは「実験型」調査の一種になりますが、因果関係をより厳密に調べることができます。

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