調査について勉強すると最初に「定量」と「定性」があると教わります。「定量」はQuantitative、「定性」はQualitativeの訳で、「量的」「質的」という言い方もあります。
「定量調査」には、訪問調査、郵送調査、電話調査、インターネット調査などがあり、数を勘定する調査である、「定性調査」は、グループインタビューやデプスインタビュー、エスノグラフィなどがあり、データとしては言葉や画像、動画などを記録・収集し、それを解釈する、というようなことが一般的に言われるところだと思います。
また、「定量調査」は比較的たくさんの数を集めて、比率や平均を算出する調査だといえ、「定性調査」は少数の事例の一つ一つに着目して分析をする調査だ、とも言えます。
以上は、取り扱うデータの性質から定量調査と定性調査をみたものですが、定性調査の教科書(「消費者理解のための定性的マーケティング・リサーチ」ベルク/フィッシャー/コジネッツ2013)をみると、これ以外に「コンテクストとの関係性」「潜在的な要因のコントロール」「リサーチャーの関わり方」という3つの側面から定量調査と定性調査を区別しています。
コンテクストとの関係性
一般に、定性調査の結果は特定の状況(時期、場所、人など)に特有なものと考えられるが、定量調査の結果は、コンテクストや文化とは無関係で、一般化できると考えられる。
言い換えると、定性調査の結果はたまたまそういう対象だったために得られた結果かもしれないのに対し、定量調査の結果は一般的に言える結果が得られる、ということです。逆の見方をすると、定量調査は一般的にいえるような広く浅い知見に限定されるのに対し、定性調査は個別のケースに対する深い洞察が得られる、といえるかもしれません。
潜在的な要因のコントロール
定性調査では、対象となる行動を形成するたくさんの要因をありのままに描き出すことが理想とされます。一方、定量調査では理想的な状況に制御されており、シンプルな因果推論を可能にすべく、変数は操作化もしくは尺度化されています。
少しややこしいので、これも言い換えてみます。人の意識や行動というのは、様々な要因が複雑に絡み合って起きている、と考えた場合、定性調査はそれらを丹念に描き出したい、と考えています。これに対し、定量調査は、様々な要因は一定になるように制御して、ある原因がどの程度結果に影響するか、を数量として測定することを目指している、といえます。いわば、定量調査は制御された実験室の実験に似ています(「制御」は、フィールドワークによる調査であっても、サンプルの選び方や対象者に提示する刺激の与え方を制御することによって行われます)
実際には定量調査でも記述型のものと因果実験型のものがあり、前者はやや定性調査の考え方に近づきますが、方法の限界で定性調査ほど多様な情報を細かく扱うことはできないといえます。
リサーチャーの関わり方
定性調査ではリサーチャー自身が調査ツールといえ、対象者と信頼関係を築くこと、そのための対人スキルが求められます。一方、定量調査ではリサーチャーの存在は対象者からは極力見えないようにし、測定結果はかっちり決められたアンケートに対する反応に依存することになります。
前掲同書によると、マーケティング・リサーチ実務における定性調査の重要性は高まっており、単に安価に行える「便宜的なフォーカスグループインタビュー」による「皮相的な分析」とは異なる方法論が求められているようになっているということです。
マーケティング・リサーチに求められている価値を考えると、現在、「実務」のための定性調査のあり方というのが業界にとって重要なテーマになっていると私も思います。
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「定量調査」には、訪問調査、郵送調査、電話調査、インターネット調査などがあり、数を勘定する調査である、「定性調査」は、グループインタビューやデプスインタビュー、エスノグラフィなどがあり、データとしては言葉や画像、動画などを記録・収集し、それを解釈する、というようなことが一般的に言われるところだと思います。
また、「定量調査」は比較的たくさんの数を集めて、比率や平均を算出する調査だといえ、「定性調査」は少数の事例の一つ一つに着目して分析をする調査だ、とも言えます。
以上は、取り扱うデータの性質から定量調査と定性調査をみたものですが、定性調査の教科書(「消費者理解のための定性的マーケティング・リサーチ」ベルク/フィッシャー/コジネッツ2013)をみると、これ以外に「コンテクストとの関係性」「潜在的な要因のコントロール」「リサーチャーの関わり方」という3つの側面から定量調査と定性調査を区別しています。
コンテクストとの関係性
一般に、定性調査の結果は特定の状況(時期、場所、人など)に特有なものと考えられるが、定量調査の結果は、コンテクストや文化とは無関係で、一般化できると考えられる。
言い換えると、定性調査の結果はたまたまそういう対象だったために得られた結果かもしれないのに対し、定量調査の結果は一般的に言える結果が得られる、ということです。逆の見方をすると、定量調査は一般的にいえるような広く浅い知見に限定されるのに対し、定性調査は個別のケースに対する深い洞察が得られる、といえるかもしれません。
潜在的な要因のコントロール
定性調査では、対象となる行動を形成するたくさんの要因をありのままに描き出すことが理想とされます。一方、定量調査では理想的な状況に制御されており、シンプルな因果推論を可能にすべく、変数は操作化もしくは尺度化されています。
少しややこしいので、これも言い換えてみます。人の意識や行動というのは、様々な要因が複雑に絡み合って起きている、と考えた場合、定性調査はそれらを丹念に描き出したい、と考えています。これに対し、定量調査は、様々な要因は一定になるように制御して、ある原因がどの程度結果に影響するか、を数量として測定することを目指している、といえます。いわば、定量調査は制御された実験室の実験に似ています(「制御」は、フィールドワークによる調査であっても、サンプルの選び方や対象者に提示する刺激の与え方を制御することによって行われます)
実際には定量調査でも記述型のものと因果実験型のものがあり、前者はやや定性調査の考え方に近づきますが、方法の限界で定性調査ほど多様な情報を細かく扱うことはできないといえます。
リサーチャーの関わり方
定性調査ではリサーチャー自身が調査ツールといえ、対象者と信頼関係を築くこと、そのための対人スキルが求められます。一方、定量調査ではリサーチャーの存在は対象者からは極力見えないようにし、測定結果はかっちり決められたアンケートに対する反応に依存することになります。
前掲同書によると、マーケティング・リサーチ実務における定性調査の重要性は高まっており、単に安価に行える「便宜的なフォーカスグループインタビュー」による「皮相的な分析」とは異なる方法論が求められているようになっているということです。
マーケティング・リサーチに求められている価値を考えると、現在、「実務」のための定性調査のあり方というのが業界にとって重要なテーマになっていると私も思います。
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