マーケティングリサーチとは?意味や市場調査との違い、代表的な手法について解説

27 2024.06

アンケート調査手法

本記事では、市場や顧客のニーズ、競合他社の動向などを調査し、ビジネス上の意思決定を支援するための分析とデータ収集のプロセスであるマーケティングリサーチについてわかりやすく解説していきます。
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マーケティングリサーチとは

マーケティングリサーチとは、マーケティング活動の中で発生する課題に対して、様々な手法を用いてデータを収集して分析し、意思決定を行う上での支援をすることを指します。企業は様々な理由からマーケティング活動を行っており、以下のようなケースがあります。
・自社の商品やサービスのターゲット
・商品やサービスは利用者に満足されているか
・自社商品と競合商品でブランドイメージが異なる
・キャンペーンやイベントの効果
マーケティングリサーチ
ビジネスでは様々な課題が生じますが、どこから手を付ければ良いのか分からないといった場面が多々あります。その際にマーケティングリサーチを活用すると、収集・分析したデータから市場の実態を明らかにし、次に取るべきアクションを根拠に基づいて意思決定が出来ます。
マーケティングリサーチは企業の売上げ向上やブランド力を高めることに繋がるため、重要なマーケティング施策と言えます。

マーケティングリサーチと市場調査の違いとは

マーケティングリサーチと市場調査の大きな違いは、調査結果の活用法です。

市場調査とは市場(マーケット)の現状を正確に把握するために行う調査で、商品やサービスを取り巻く環境の「過去から今」の実態を調べます。一方のマーケティングリサーチは、あらゆるマーケティング課題を解決するために行う調査で、商品やサービスの「今から未来」に向けてのニーズを探るために行います。

市場調査は自社商品やサービスの開発段階やローンチ時に多く行われ、マーケティングリサーチは開発時からローンチ以降のマーケティング施策全体のために行われます。そのため市場調査は、マーケティングリサーチの一環といえるでしょう。

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マーケティングリサーチの市場規模

一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会が実施している「第48回経営業務実態調査結果解説(前編)」によると、2022年の日本の従来型調査市場規模は2,590億円で、前年比109.9%となっています。
マーケティングリサーチの市場規模
この年の大きな特徴としては、コロナ禍でも成長を牽引していたインターネット調査が前年比100.5%と伸び悩み、一方既存手法によるアドホック調査が112.1%と復調を維持した点が挙げられます。グループインタビューなどもオンラインから従来の対面式への回帰が報告されており、リアルな調査への揺り戻しが起きているようです。

またインターネット調査の頭打ちも予測される反面、「ネット+定性調査」のような複合型手法に変化している可能性も指摘されています。

参考:第48回 経営業務実態調査結果解説<前編>

マーケティングリサーチの具体例

こちらでは「ノンアルコールビール市場」で、A社が行ったオーソドックスなマーケティングリサーチの具体例についてご紹介します。
かつてA社はノンアルコールビールのシェアはわずか2%しかなく一人負けの状態でした。その後A社はシェアを拡大するために「予備調査」と「本調査」を合わせて合計2回、延べ対象者1000人でマーケティングリサーチを実施します。この時のマーケティングリサーチでわかったことは、競合他社製品は「健康」「女性的」「フルーティ」で、ビールとはイメージが異なるジャンルのゾーンで購入されていました。そんな中「男性的」「ビールに近い」という空白地帯のゾーンが発見されます。A社は空白地帯のユーザーに訴求するため「ビールの代替品」というマーケティングを行い、わずか2%だったシェアを24%にまで引き上げることに成功しました。
マーケティングリサーチを実施するメリット

マーケティングリサーチを実施するメリット

マーケティングリサーチにはさまざまなメリットがあります。
こちらではマーケティングリサーチを実施するメリットについてご紹介します。

実態をデータにでき、事業展開がしやすくなる

マーケティングリサーチを行うと、実態をデータにでき、事業展開がしやすくなるメリットがあります。マーケティングリサーチをすることで、商品のニーズ、市場からのニーズ、競合他社の状況、市場のトレンドなどの実態をつかむことができます。さらに取得したデータを基に、分析し、市場競争力が高い商品の開発を進めることが可能です。これにより市場で自社商品の優位性に貢献することができ、事業展開がしやすくなります。

リスクを低減できる

マーケティングリサーチを行うと、リスクを低減できるメリットがあります。商品の市場投入にはさまざまなリスクがあることから、市場投入前にマーケティングリサーチを行い、できるだけ早い段階でリスクにつながる問題点を発見しなければなりません。具体的にはユーザーニーズの把握、競合他社の戦略、市場規模のボリューム、市場の空きゾーン、参入障壁の高さ、市場のトレンドの変化、経済状況の動向などです。マーケティングリサーチを行うことで、これらの中に潜む問題点にいち早く気づくことでリスクを低減することができます。
定量調査と定性調査

定量調査と定性調査について

マーケティングリサーチには定量調査、定性調査という分類があります。定量調査とは「数値」として結果が得られ分析を行うもの、定性調査とは数値情報ではなく「言葉」として結果が得られるものです。以下ではその違いについてもう少し具体的に解説を行います。

定量調査とは

定量調査とは、数値化できるデータを収集して分析する調査方法です。調査した結果を数値で表すため、分析を簡単に行えることが特徴になります。数字を出す必要があるため、定量調査の場合はインターネットリサーチ、会場調査、郵送調査、電話調査などを行います。データを集めることで説得力を持たせることができるので、調査結果も確信できるでしょう。

定性調査とは

定性調査は対象者と対面して質問を行い、回答や意見を集める方法です。調査者と相手の会話によって進行し、質問への回答を深掘りして数値やデータ化しにくい部分を汲み取れます。また、ターゲットである消費者の意向を汲み取ることができ、製品改善のためのアイデアやヒント、改善点の発見を取得できます。方法は主にグループインタビューやインデプスインタビューなどがあります。
マーケティングリサーチの分類

マーケティングリサーチの代表的な手法

マーケティングリサーチを理解するに当たり、まずは代表的な手法を知りましょう。様々な手法が存在し、それぞれに独自の強みと適用場面があります。

パネル調査

パネル調査とは調査の対象者を固定し、一定期間内において繰り返し調査を行う手法のことです。固定された調査の対象者をパネルということからパネル調査と呼ばれています。
イメージのつきやすい例としては小売店に対するパネル調査が挙げられます。
調査対象の小売店を固定し、来客数や販売データを継続的に収集します。例えば商品の流通を担う事業者であればそのパネルデータを見ながらどの店舗に各商品を卸すか、などの判断を行うことが出来ます。

パネル調査の最大の強みとして、データを継続的に蓄積しその推移を比較できる点が挙げられるかと思います。同じ対象者、同じ調査内容で得たデータを蓄積するため、容易に比較を行うことが出来ます。また調査が固定されているというのはオペレーションの観点からしても非常に効率的です。

一方で、徐々に調査対象者が脱落していく中で最終的に調査対象者が減ってしまう、などのデメリットもあります。減少分を加味して当初から多めの調査対象者を確保するなどの対応が求められますが、それを考えても余りあるメリットのある調査種別です。

アドホック調査

上述のパネル調査に対し、1回限りで完結する調査のことをアドホック調査と言います。アドホック調査は都度都度その調査内容を企画し、調査を実行し、結果を集計するという手順を踏みます。当然、継続的に実施するパネル調査に比較して一回当たりの手間は増えますが、一般的にはピンポイントで知りたいことが発生した際に行うのがアドホック調査であるため、それに対しての回答を供給してくれるという意味では強力なツールとなります。

オープンデータ調査

オープンデータ調査とは、主に国や地方公共団体が提供する「著作権フリー」のデータを使った調査を行う手法のことです。特徴は営利目的・非営利目的のどちらにも使え、二次利用が可能で、機械判読に適し、無償で利用できる公開データという特徴があります。活用されるシーンは、行政の情報、交通機関情報、観光スポット情報、イベント情報、災害情報、感染症情報などを広く国民に公開する時に活用されます。これにより利用者は正確な情報へのアクセス、利便性の向上、情報の比較、情報難民の解消ができます。また、企業の活用方法としては、社会課題への貢献、または解消に役立つ新規事業の創出や開発を進めることが可能です。

覆面調査

覆面調査とは、調査員が一般のお客を装い、店舗・施設などの評価をする調査手法のことです。
特徴は、調査員が予告なしで店舗・施設に訪れ、実際に商品を購入したり、サービスを利用したり、スタッフの接客態度を観察したり、清潔保持などの調査をすべて無申告で行います。活用されるシーンは自社の商品の品質を上げたい時、自社のサービスを向上させたい時、スタッフの対応を強化したい時、店内・施設内の衛生を改善したい時などに活用されます。
一般的には、自社とは関係のない第3者が調査をするので客観的な評価を得ることが可能です。
活用方法は、一般の主婦や学生に依頼する場合と専門調査員に依頼する場合があり、消費者目線のデータが欲しい時には一般の主婦や学生に依頼し、マーケティングなどの専門性の高い分野に関するデータが欲しい時は専門調査員に依頼します。

ホームユーステスト

ホームユーステスト(HUT)とは、調査対象者の自宅などに商品を送り試用や試飲、試食などのトライアルをしてもらい、評価や感想を聞き取る調査手法です。食品や化粧品、美容機器、ペット用品など、一定期間使ってみないと効果を実感できない商品の開発時や改良時などに適しています。

企業や特設会場などで行うテストと異なり実生活に近い環境でのトライアルとなるため、よりリアルな感想やホンネを聞けるのが特徴です。一定期間試用するため、途中で飽きないかといった意識の変化や商品の消耗度合などを確認できるのも特徴です。
マーケティングリサーチを行う上での流れ

マーケティングリサーチを行う上での流れ

次に実際にマーケティングリサーチを行うに当たっての流れを解説していきます。これからマーケティングリサーチを行おうとしている方は以下の流れに沿って行ってみて下さい。既にマーケティングリサーチを行っている方も、改めてその業務フローを振り返ってみて頂ければ幸いです。

企画

まず、調査を行う上での目的、また予算感やスケジュールなどの洗い出しを行います。細部の設計を行う前に全体感の企画を行います。その際、調査目的、調査対象、調査手法の3点を明確化し、関係者で共有してください。調査対象や調査手法は調査目的に応じて決まるため、まずは調査目的、つまり何のために調査を行うのかを明確に決めて下さい。よくあるのが、調査目的の設定が甘いというミスです。目的がぶれていると後々の実査が思いついたものを詰め込んだクオリティの低いものとなってしまいます。この調査目的の設定が調査自体の成功の可否を握っています。きっちりと明確な目的を設定するようにして下さい。

設計

ここから具体的な調査項目を設定していきます。例えばネットリサーチであれば設問文や選択肢、また全体の設問順を考えるのがこのフェーズです。この段階で、前段の調査目的がぼやけていたら設計までがあやふやになってしまいます。調査目的を見失うと、次から次へと聞きたいことを盛り込んだ全体感のない設計が出来上がります。本当に知りたいことは何なのか、から設計の取捨選択をするようにして下さい。

実査

設計が完成したらいよいよ実査のフェーズに入ります。インタビューなど定性調査の場合は特に、入念な事前の準備が大事となります。事前にシミュレーションをした上で実査を行うようにしましょう。

分析

実査が終わったら得られたデータを分析します。今まで行ってきた企画、実査、分析は全てこのフェーズのためにあります。マーケティングリサーチの結果として得られたデータを分析し、具体的なアクションに繋げるようにしましょう。
マーケティングリサーチを実施する際のポイント

マーケティングリサーチを実施する際のポイント

マーケティングリサーチを実施する際には、前段階でさまざまな準備を行う必要があります。
主なポイントは次の通りです。

①目的を決める 
なぜ調査を行うのか、何を知りたいのかなど、調査で明らかにしたいことを明確にします。
これにより効果的なマーケティングリサーチを行うことができます。

②手法を決める
マーケティングリサーチにはさまざまな手法があります。
目的に応じた手法を選択することで、知りたい情報を効率的に得ることができます。

③調査対象を決める
マーケティングリサーチの目的を実現するためには、どんなセグメントに対してアプローチをすればよいのかを決めます。
通常、マーケティングリサーチのセグメントは年齢・性別・職業・住んでいる地域・生活習慣などから選択されます。

④調査項目を決める
マーケティングリサーチの調査項目は、調査目的を実現するために必要な項目を抽出して選択します。
この場合、調査項目を増やし過ぎずに、必要な項目だけに絞ることをおすすめします。

⑤調査票を作成する
調査票を作成するとは、実際に調査する調査内容をすべて確定することです。
これによりマーケティングリサーチを実施することが可能です。

マーケティングリサーチのまとめ

さて、本記事ではマーケティングリサーチの概要からその種別、また実施手順まで解説してきました。あくまで重要なことは「マーケティングリサーチとは手段である」ということです。実現したいビジネスのゴールに向かう上でマーケティングリサーチはとても強いツールとなります。出来ることと出来ないことは何か、また適切な手法は何なのかというところから、実になるマーケティングリサーチを行って頂ければ幸いです!

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