アンケート選択肢「どちらともいえない」の位置はどこに置くのが良い?考え方について解説

18 2024.01

アンケート作成

アンケート選択肢「どちらともいえない」の位置はどこに置くのが良い?考え方について解説
『行動計量学』(日本行動計量学会の学会誌)に、5段階評価アンケートの作り方について参考になる論文が載っていたのでご紹介します。
論文は『アイトラッキングによる自記式質問紙への回答行動の分析-Web調査用質問画面の場合-』(浅川・岡野・林 2020)というものです。
こちらの論文には主に、選択肢の位置で回答傾向が変わるのか、回答者はどのように選択肢を認識しているのかなどを実験した結果が載っているため、アンケート設計や作成者にとって非常に参考になるとともにどんな分析をしたいかによって設計時の判断基準を持つことができます。
アンケート作成のポイントがわかる!


アンケートにおける5段階評価

5段階評価とは

アンケートで、自社のサービスを利用した顧客に対してサービスの満足度を聴取したり、新商品を開発する際にコンセプトを提示し購入意向度を聴取したりなど、指標を計測する方法として5段階評価は広く様々なアンケートで使われています。
例えば、「当てはまる、やや当てはまる、どちらともいえない、やや当てはまらない、当てはまらない」のような5つの選択肢を用意し、最も当てはまる選択肢を選んでもらう形式となります。このような段階を用意して計測する方法を評定尺度(段階尺度)法と言います。

アンケート選択肢「どちらともいえない」の位置に関する研究結果

評定尺度の選択肢の並べ方について、5段階評価のAタイプ、Bタイプ2種類で調査を実施したときどのような影響があるのかという実験を行っています。(論文ではマトリクス形式の質問ですが、ここでは例として単問の形式で表しています。)
Aタイプ Bタイプ
1 当てはまる 当てはまる
2 やや当てはまる やや当てはまる
3 どちらともいえない やや当てはまらない
4 やや当てはまらない 当てはまらない
5 当てはまらない どちらともいえない

要は、「どちらともいえない」という回答選択肢をどこに置くかという違いです。実際のアンケートでは中間に配置するAタイプを見かけることが多いですが、Bタイプもたまにあります。また、Bタイプの場合には「どちらともいえない」ではなく「わからない」という表現が多いように思います。

実験の結果、大きく3つのことがわかりました。

「どちらともいえない」を1番下に配置すると意味を誤認される

「どちらともいえない」を一番下に配置した場合(Bタイプ)、一番ネガティブ(「当てはまらない」)と誤認してい回答してしまうということが起こっているようです。

「どちらともいえない」は配置場所で回答傾向が変わる

誤認しなかった人でも、Aタイプでは「どちらともいえない」をポジティブ~ネガティブというグラデーションの中の「中間的」な意味と理解しているのに対し、Bタイプでは、グラデーションからは「外れた」という意味で理解しているように思います。

選択肢文言だけでなく位置が大事

誤認のメカニズムについて、アイトラッキング(視線計測装置)によって調べた結果もご紹介します。
論文の実験ではマトリクス形式の設問で、選択肢の言葉と、入力フォーム(ラジオボタン)には距離があります。回答者の視線は言葉とボタンを行き来するのですが、アイトラッキングの結果によって、誤認をした人の視線の動きを見ると、選択肢の言葉部分への視線の動きが少ないことがわかりました。
アンケートの選択肢を作る際、言葉だけではなくて、その配置、位置についても考慮することが必要なのが改めてわかる結果となりました。

アンケート選択肢における配置の重要性

上述したように研究結果から、アンケートの回答者は、選択肢の言葉だけでなく、その位置によって意味を理解しているということだと思います。
「どちらともいえない」を中間的な意味として分析するのであれば、中間に置くべきであるし(評定尺度はポジネガ同数である必要はないので、「真ん中」とは限りませんが)、そのグラデーションから外れた意味として分析するのであれば外れた位置に、たとえば、他の選択肢とは明確に距離を置いて、回答者に意味を理解する手がかりを置かれた位置からも与える、といった工夫が考えられます。

アンケート選択肢に「どちらともいえない」は必要か

ここまで、中立選択肢を入れる位置についてご紹介しましたが、そもそも中立選択肢は必要なのか疑問に思われる方も多いと思います。
「どちらともいえない」のような選択肢を入れるべきかは、リサーチャーの中でも意見が分かれることがありますので、アンケートを行う目的を達成できるか否かで判断していただければと思います。
判断基準として下記で中立選択肢を入れるメリットとデメリットを解説していきます。

中立選択肢「どちらともいえない」を含めるメリット

1つ目のメリットは、回答者が回答しやすいことです。
回答者によっては、ある質問に対して中立的立場を取りたい場合があります。中立的選択肢がない場合、ポジティブまたは、ネガティブな選択肢のどちらかを選ばなければいけない状況は負担になってしまいます。
心理的負担を軽減することができるため、回答者にストレスを与えずアンケートに協力してもらえるように回答者を考慮する場合は「どちらともいえない」を用意していた方がベターとなります。
また、アンケートの回答結果として中立的立場の人がどのくらいいるかを把握することが有益な情報に繋がることもあるでしょう。このような場合も選択肢に盛り込んでおくと良いです。

2つ目のメリットとして、集計時に平均値を出しやすいということが挙げられます。ポジティブとネガティブのどちらかに振り切った選択肢の場合より、正確な平均値を求めることができるためアンケートの回答結果を反映しやすいと考えられています。

中立選択肢「どちらともいえない」を含めるデメリット

5段階評価にすると、中立選択肢に回答が集まる傾向があり、調査結果を基に改善点を見つけることが難しくなる場合があります。これは国民性も大きく影響しており、特に日本人は極端な選択肢を避ける傾向があることがわかっているため中立評価をしやすくなります。5段階評価の結果を報告するときに、結局どうすれば良いかわからないということになることもありますので、改善点などをはっきりさせたい場合は入れずに4段階評価にした方が意思決定がしやすくなるでしょう。
また、「どちらともいえない」のような選択肢は中立的立場で選択される以外に「わからない、自分には関係がなくどうでもいい」などの基準の場合もあるため、回答者の意図がわからず、回答結果に歪みをもたらす場合もあります。このような場合は質問文に質問意図をしっかり伝える必要があるでしょう。

まとめ

今回は5段階評価をする際の「どちらともいえない」に関する考え方をご紹介しました。アンケートを実施する際に、どんな目的でアンケートを実施するのか、得られたデータをどのように分析するのかなどで設計は変わってくるかと思います。正解はないですがこのような結果を念頭に置いておくと判断に迷わず、アンケートを作成することができるでしょう。
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