クラスターとクラッター

30 2024.01

編集室メンバーコラム

クラスター cluster とクラッタ― clutter という、とてもよく似た(音で聞いたのでは判別できそうにない)言葉がありまして、どちらもマーケティングリサーチに関係しています。

「クラスター」はほとんどの人が聞いたことがあると思いますが、特にコロナ禍の「クラスター対策」で人口に膾炙しました。

もともとは「房」という意味ですが、「同種のものや人の集団」という意味で様々に使われます。
クラスターとクラッター
コロナ禍のような感染症に関して疫学的に使われる場合は、「小規模な集団感染やそれによってできた感染者の集団」のことです。

それ以前にもクラスターという言葉は少し流行していて、それはnerd/geek、要は「○○オタク」の集団を指す言葉として、伸ばさない「クラスタ」という言葉でネットを中心に使われました。例えば、私だったら「マーケティングクラスタ」「統計クラスタ」「お笑いクラスタ」などに分類される感じです。

Twitterに存在する「クラスタ」を確認できる範囲でまとめてみた

オタクの「クラスタ」は、社会学でいう「島宇宙化」、つまり自分と同じ価値観を持つ小さな集団の中で暮らしていくことをよく表している言葉で、日本では1990年代以降の話ですが、この傾向は今も引き続き言われていると思います。

さて、マーケティングリサーチで「クラスター」という言葉を使う場合には、多数の変数をもとに、統計手法(主にward法などの階層的分類や、k-means法などの非階層的分類)を使って、いくつかのグループに分類、特定された集団のことをいいます。

このクラスター(手法)は、ライフスタイルや価値観によるマーケティングと関連しています。性別・年齢などのデモグラフィック属性や、ヘビー/ライトユーザーなどの行動属性では捉えられない、価値観・ライフスタイルの違いによるニーズがあり、そこをマーケティングしていこう、というような考え方です。

ライフスタイル・マーケティングとそのための「クラスター」による分析が最も盛んだったのは1980年代ごろで、90年代以降になると人々が「クラスタ」に分かれてしまったので、大きな価値観の「クラスター」では現状を分析できていないのではないか、などということが考えられました。

そこで、小さな「クラスタ」や消費者一人ひとりと細かくコミュニケーションしていこうとしたのが「ブランド」という現在のマーケティングの方向性ではなかったかなと思います。
クラッター
さて、もう一方の「クラッタ―」は「散らかっている」とか「ごちゃごちゃしている」という意味です。

こちらはあまり一般には使われていないのですが、業界用語としては「広告クラッタ―」という言葉があり、これは広告氾濫度を意味します。つまり、広告が散らかっている、あふれかえっている状態、ということで、ネット上であまり品のよくない情報を検索したりすると、広告がクラッタ―化した典型例を目にしますね。

当然、広告を見る人は混乱・うんざりするし、ひとつひとつの広告が訴えていることはノイズの海の中で伝わらなくなります(クラッタ―効果という)。

この言い方は、商品やブランドについても転用でき、商品やブランドがクラッタ―化している(氾濫していて、伝わらない)ということもあります。

そうすると、「クラスタ」は「クラスター」の氾濫、クラッタ―化といえるかもしれないですね。そうなると、マーケティングをする側は、あまりにごちゃごちゃしていて、人々のニーズを受け取ることができなくなるかもしれません

ブランドやセグメントのクラッタ―化傾向が行きついたように感じられるときに、つまり現在のことですが、マーケティングはどう考えるようになったか、を次の「ブランドをどうとらえるか」で紹介したいと思います。

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