目次
最小二乗法とは、バラバラなデータに最も当てはまる直線を数学的に導き出す計算手法です。売上予測や品質管理など、ビジネスの現場で広く使われています。
この記事では以下の内容を、統計の専門知識がない方にもわかるよう解説します。
・最小二乗法の意味と、誤差を二乗する理由
・回帰分析との違い
・エクセルで直線を求める具体的な手順
・実際の企業での活用事例
読み終わると、最小二乗法の仕組みを同僚に説明できるレベルで理解し、エクセルを使った予測を自分で実行できるようになります。

最小二乗法とは何か
データに一番当てはまる直線を導き出す手法
このようにして求められた直線を活用することで、未知のデータへの予測が可能になるのです。たとえば気温と売上の関係を式で表せれば、明日の気温情報をもとに売上を精度高く見積もれるようになります。
誤差の二乗和を最小化する理由
誤差にはプラスの方向とマイナスの方向のズレが存在するため、そのまま足し合わせると互いに打ち消し合ってしまい、正しい誤差の大きさを測ることができません。そのため、数値を二乗してすべてプラスの値に変換してから合計し、その値が最小になるポイントを探す仕組みになっています。
ただし、二乗する特性上、極端に離れた外れ値の影響を大きく受けてしまう点には注意が必要です。
最小二乗法を活用する具体的な場面
以下の表では、代表的な活用業界とその目的・期待効果を整理しているので、自社業務との共通点を確認してみてください。
| 業界 | 活用目的 | 具体例 |
|---|---|---|
| 小売・流通 | 需要予測・在庫最適化 | 気温や曜日をもとに翌週の来客数を予測する |
| 製造業 | 品質管理・不良率分析 | 製造条件と不良品発生率の関係を分析する |
| 金融・保険 | リスク評価・価格設定 | 過去の損害データをもとに保険料を算出する |
| マーケティング | 広告効果の測定 | 広告費と売上の相関から最適な予算配分を決める |
売上予測や需要予測における活用
製造業における品質管理や傾向分析
最小二乗法と回帰分析の関係性
以下の表では分析手法の種類と説明変数の数を整理しています。それぞれの違いを把握することで、場面に応じた適切な分析手法を選べるようになります。
| 分析の手法 | 説明変数の数 | 具体的な活用例 |
|---|---|---|
| 単回帰分析 | 1つ | 気温の変化からアイスコーヒーの売上を予測する |
| 重回帰分析 | 複数 | 気温・曜日・広告費から全体の売上を予測する |
回帰分析という大きな枠組みの中の計算手法
つまり両者は目的と手段の関係にあり、回帰分析を実行するための道具が最小二乗法です。
単回帰分析と重回帰分析における役割
エクセルを使った最小二乗法の求め方
| エクセルの機能 | 特徴とメリット | 適している状況 |
|---|---|---|
| 散布図の近似曲線 | 視覚的に直線の当てはまり具合を確認できる | データの全体的な傾向を直感的に把握したいとき |
| LINEST関数 | 傾きと切片の数値をセルに直接出力できる | 取得した数値を別の計算や予測モデルに流用したいとき |
散布図を活用して近似曲線を表示する手順
データ範囲を選択する
予測に使いたいデータ(例:気温と売上)のセル範囲をドラッグして選択します。
散布図を挿入する
上部メニューの 挿入 タブをクリックし、グラフの種類から「散布図」を選択します。
近似曲線を追加する
グラフ上のデータ点を右クリックし、表示されたメニューから「近似曲線の追加」を選択します。種類は 線形 を選びます。
グラフに数式を表示する
近似曲線のオプション画面で「グラフに数式を表示する」にチェックを入れると、傾きと切片の数値がグラフ上に表示されます。
回帰直線と数式がグラフ上に表示されます
📌 グラフの見方
- 青い点:実際に観測した気温と売上のデータ
- 赤い直線:最小二乗法で導いた近似直線
- y = 2.0x − 8.0:気温が1℃上がると売上が約2万円増加することを示す
- R² = 0.953:直線のデータへの当てはまり精度(1に近いほど高精度)
LINEST関数を用いて傾きと切片を計算する方法
結果を表示したいセルを2つ選択する
傾きと切片の2つの値が横に並んで出力されるため、隣り合った2つのセル(例:C2:D2)をあらかじめ選択しておきます。
LINEST関数を入力する
選択したセルの先頭に以下の数式を入力します。
※ 第1引数:目的変数(売上)の範囲 第2引数:説明変数(気温)の範囲
Ctrl + Shift + Enter で確定する
配列数式として入力するため、通常のEnterではなく Ctrl + Shift + Enter で確定します。
※ Microsoft 365・Excel 2021以降はEnterのみで確定できます。
傾きと切片がセルに自動で出力されます
📌 出力結果の見方
- 傾き(C列)= 2.0:気温が1℃上がるごとに売上が約2万円増加することを示す
- 切片(D列)= −8.0:回帰直線がY軸と交わる基準点。予測式はy = 2.0x − 8.0
- データを更新すると、C・D列の数値も自動で再計算される
最小二乗法を用いた実際の活用事例
チェーン店舗の出店判断における売上予測(技研商事インターナショナル株式会社)
最小二乗法に関するよくある質問
Q最小二乗法と回帰分析は何が違うのですか?
A
回帰分析は変数間の関係を明らかにする「分析手法」であり、最小二乗法はその分析を実行するための「計算プロセス」です。
回帰分析という目的を達成するための道具が最小二乗法だと理解すると整理しやすいでしょう。
Q最小二乗法はエクセルで計算できますか?
A
はい、エクセルの標準機能で計算できます。
データの傾向を視覚的に確認したい場合は散布図の近似曲線機能、傾きや切片の数値を別の計算に使いたい場合はLINEST関数が適しています。
Q外れ値がある場合でも最小二乗法は使えますか?
A
使えますが注意が必要です。
最小二乗法は誤差を二乗するため、外れ値の影響を通常より大きく受けます。外れ値がデータに含まれる場合は、事前に外れ値を除外するか、外れ値の影響を受けにくいロバスト回帰などの手法も検討してください。
最小二乗法を理解するためのまとめ
・最小二乗法は実測値と予測値の誤差の二乗和を最小化し最適な直線を求める手法である
・ビジネスにおける需要予測や製造業の品質管理など幅広い領域で活用されている
・回帰分析を実行するための具体的な計算プロセスとして機能している
・エクセルの散布図やLINEST関数を利用することで簡単に直線の式を算出できる
・企業ではこの仕組みを応用して発注業務の効率化や精度の高い予測を実現している
まずは手元にある売上データや気温データをエクセルに入力し、散布図を作成するところから始めてみましょう。直線が引けた段階で、傾きと切片の数値が実際のビジネス課題とどう結びつくかを考えると、最小二乗法の理解が一気に深まります。さらに精度の高い予測モデルを構築したい場合は、重回帰分析や専用の分析ツールの導入も検討してみてください。
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