2021年10月12日 更新

アンケートは小さく、データは大きく

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アンケートの「スマート化」

オンライン調査パネルの主な回答デバイスがPCからスマートフォンに移って、近年のリサーチ業界の課題はアンケートの「スマート化」であるといえます。

JMRA(日本マーケティングリサーチ協会)の「インターネット調査品質ガイドライン」では、スマートフォン化に対応した基本方針として次の3つをあげています。

1.調査協力者を大切にする
2.調査協力しやすい調査票を設計する(調査ボリュームの軽減)
3.時代に応じたインターネット調査を実施する(回答デバイスに配慮した調査設計)

「1.調査協力者を大切にする」は主に回答者のプライバシー保護や適切な謝礼についての話ですが、「2.調査協力しやすい調査票を設計する」はアンケート設計についての指針になっていて、

・回答所要時間は10分以内を推奨
・巨大マトリクスは使わない
・マトリクス形式や自由回答を多用しない
・スクリーニング調査では抽出に使わない質問を控える

といった具体的な例があげられています。

また、「3.時代に応じたインターネット調査を実施する」の具体例としては次のようなことがらがあげられており、こちらも2番目同様アンケートのボリュームを小さくする方向性が求められています。

・マルチデバイスで回答できるようにする
・回答環境に配慮する
・デバイス環境に対応したコミュニケーション
・無駄を省いたシンプル設計
・まずは自分で回答してみる

業界でもこうした方向性に対応した工夫が進んでいて、インテージ社のi-タイルという仕組みは、回答負荷的に問題になりがちなマトリクス設問を自動的にばらして表示します。

<インテージ社のi-タイルの説明>
「i-タイルでは1項目回答ごとに紙芝居感覚で次々に新しい画面を表示し、回答を進めます。回答者は1項目1画面ごとにフレッシュに、しっかり選択肢を見て回答することができます」

また、Qualtricsなどのアンケート作成ツールでは、作成後に設問ボリューム、設問形式、自由回答の数などを評価して、モバイル最適化・回答負荷の観点からアンケートの質をレビューする(良いアンケートか、不適当なアンケートかを判定する)機能があり、改善案が表示されます。

このように、とかくボリュームが大きくなりがちな、マーケティング・リサーチのアンケートについて、「スマート化」することが業界全体や個々のリサーチャーに近年求められています。

パッシブデータの利用

一方、ESOMAR(ヨーロッパ世論・市場調査協会)の近年の各種ガイドラインは、「パッシブデータ」の使用拡大に対応した内容にアップデートされています。

パッシブデータとは、アンケート対象者が能動的に回答するのではなく、受動的に(デバイス等から機械的に自動で)取得されるデータのことで、次のようなものがあります。

•    デバイスID、デジタルフィンガープリント
•    クッキー情報、ブラウザ履歴
•    アプリ使用データ
•    カードデータ
•    位置情報データ
•    SNSデータ,ウェアラブル機器や IoT機器からのデータ
•    表情解析データ
•    アイトラッキングデータ
•    写真、ビデオ、録音
•    店内行動データ
•    回答行動のデータ…操作履歴、ユーザーエージェント、回答時間(パラデータ)

特に、最後の「回答行動のデータ」はアンケートに特有のもので、回答時に機器から取得できる回答以外の情報を「パラデータ」といいます。

パッシブデータの取得はプライバシーの問題や倫理に関係しますので、業界のガイドラインが整備されているというわけです。

パラデータを含めたパッシブデータがどのような目的で利用されるかというと、次の2つです。

1.    リサーチデータとして、あるいはマッチングさせて分析するマーケティング情報
2.    リサーチの質の担保、パネル重複の排除、回答の質

アンケートは「スマート化」してシンプルになるが、パッシブデータやパラデータの収集によってデータは大きく複雑になり、それによって多様で質の高い分析をしたい、というのがオンライン調査の今後の1つの方向性になっています。

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