2022年7月21日 更新

オートコール(IVR)とインタビュー

gettyimages (431)

IVRへの注目

以前のコラム「調査結果を気軽にけなす素人がむかつく」https://mr-journal.com/JmswB でふれた毎日新聞の世論調査について、リサーチの方法論的な話題としては、自動音声電話(オートコール、IVR=Interactive voice response)とSMS(ショートメッセージ)を利用した聴取方法への変更があげられます。

6/5には日経リサーチも『自動音声応答通話(オートコール)を使った「世論観測」サービスを開始』https://www.nikkei-r.co.jp/news/release/id=7250 というプレスリリースを出しており、業界でIVRが注目されてきています。これには、新型コロナによってコールセンターにオペレータを集めること自体も難しくなった、という事情が影響しているようです。

毎日新聞の調査は、固定電話についてはRDDからIVRで実査、世帯内個人の抽出法については詳細不明です。スマートフォン/携帯電話についてはRDDからIVRでショートメッセージ送信の応諾をとっているようです。ショートメッセージからの実査の詳細は不明ですが、システム的な面をバックアップしていると思われるグリーン・シップ社 https://www.green-ship.co.jp/ のシステムだとすると、ショートメッセージからweb調査画面に誘導しているのではないかと思われます。

いわゆるミックス・モード調査ですが、調査員による電話調査(インタビュー)から、自記式調査へ大きな方法の変更があった、とみることができます(IVRは電話調査ですが自記式 self-administrated に分類されます)。

自記式とインタビュー

「人が関与しないから信頼度が増す」というようにIVRを評価する人もいます。これはあまりにも短絡的な見方ですが、とはいえ調査員バイアス=インタビューアの性別、人種、質問の聴き方などによる影響が排除できるのは良い点としてあげられます。

調査員調査が困難になる中、マーケティング・リサーチではすでにそうなっているように、定量調査のインタビューから自記式調査への移行は時代の要請でしょう。

一方、自記式になることによって失われるものもあると思います。インタビューの効用としては、次の3つをあげることができます。
(1)    適切な対象者を選び出し、協力を得るリクルート能力(回収率、代表性に関わる)
(2)    回答する手助けをし、モチベーションを上げる(無回答誤差、非標本誤差に関わる)
(3)    回答者とのやりとりができることによって、リサーチャーの調査/測定手段の幅が広がる

こうあげてみると、いずれも現在主流のオンライン調査について、イノベーションの方向性を示しているように思われます。

(1) は自発的登録に基づくリサーチ用パネルへの依存からのイノベーション。(2)は、単に紙のアンケートをwebに移し替えただけの回答インターフェイスのイノベーション。(3)も同様にインタラクティブな設問・実査手法によって収集できるデータの量と質を向上させるイノベーション、と考えられます。いずれについても、AIや様々な革新的技術によって、多方向からのチャレンジができるのではないでしょうか。

質問しているのはだれか

もう一つ気になったことがあって、それはIVRの声はだれの声かということです。性別が調査員バイアスになるとすれば、女性でも男性でもない声なのか。年齢の感じは。むしろ、非人間的な無機質な感じの方がよいのか。

さらに進めて考えると、Web調査のように現状テキスト中心のものも、インタラクティブ性を高めるために、質問者が擬人化されていくかもしれません。AlexaとかSiriのように。

ちなみに、以前、自動ビデオ通話(ビデオ上でCGのロボットが質問をする)によるアンケートの協力意向者に、質問者の見かけの希望をたずねたことがあります(下図)が、何が良いかはなかなかイメージできにくいようです。
(C) Rough Commons (438)

via (C) Rough Commons
もしかすると、人口に膾炙し信頼されるリサーチ・ロボットのキャラクター(ブランド)を作ることが最大のイノベーションかもしれない、と空想しました。

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