【対談企画:資生堂ジャパン元社長(杉山繁和氏)②】商品開発の裏側

22 2022.07

対談・インタビュー

資生堂ジャパン元社長(杉山繁和氏)が語る「商品開発の裏側」【対談後半】

マーケティングリサーチの成功例

マーケティングリサーチの成功例として、コカ・コーラ時代の話をしていただきました。

20年くらい前、セグメンテーションが流行った時代がありました。
〇〇系はこういうファッションをする、〇〇系はこういう行動しがち、というようなものです。

しかし飲料に関してはそういうセグメンテーションはありません。
コカ・コーラを飲む人は〇〇派、というのは聞かないですし、水なんてもっと〇〇派、というようなセグメンテーションはありません。

そんなとき、飲料はそのときのモチベーションに左右されるよね、という話を耳にしました。
同じコーヒーでも朝飲むとき、お昼ご飯の後、夜に飲むときで飲む人の気分が違います。

そこに目を付け、朝は何をどんなモチベーションで何ml飲んだか、というようにモチベーションと絡める調査を実施しました。
結果は面白いくらい実際の出荷量と合致し、マーケティングから営業まで、またグローバル単位でも利用でき、すごく使えるデータとなりました。

マーケティングリサーチの失敗例

マーケティングリサーチの失敗例を伺ったところ、失敗ではないもののリサーチャー側の態度や覚悟が足りなかったという資生堂時代の話をしていただきました。

プリオールという今でも人気の化粧品のパッケージ調査をしていた時の話です。
50代の女性にどのパッケージのデザインが好みか、という調査を実施しました。

リサーチそのものは正確にやったので失敗ではありませんでした。
しかし、出てきた結果が杉山さんはじめ、ほかのリサーチャーの予想外の結果が出てきてしまいました。
色んな色のデザインがある中で、ショッキングピンクのカラーが1番人気だったのです。

「50代はショッキングピンクというような派手な色は選ばないのではないか」と多くの人が考えてしまっていましたが、「そういった偏った見方はやめましょう。女はいつまでも女なんです」という言葉にハッとし、調査結果通りにマーケットに出したら飛ぶように売れました。

調査設計時にバイアスがかからないように、と意識していたにも関わらず、もっと大きなくくりの中でというバイアスの中にいたのです。

マーケティングリサーチの小ネタ

実際のマーケットに置かれている環境と、調査環境の整合性をとる

パッケージ調査を実施した際に、きちんとやったはずなのにデータが使えないものになっていた、という経験があったそうです。

店頭に並んでいるように商品棚を再現したものの、実際の店頭では金額が書かれているプライスカードはお店によっては棚の上についていることもあるし、飲料だと金額が書かれている下の部分が隠れていることもあります。
しかし調査では全部見えるようにして実施してしまい実際のマーケットの環境が反映されていなかったので、調査結果と実際のマーケットが全然違ったそうです。

店頭の再現をするときにいつも店を見ておかないと役に立たないし、実際のマーケットとの整合性を取ることが大切です。

研究員が使っている言葉と消費者が使っている言葉は意味が違うことがある

調査項目を考えるときに軽視しがちですが、アトリビュートもきちんと考えることが大切です。

たとえば「すべすべ」という単語。
一般的に消費者は「ツルツル」に近いイメージで、そこにみずみずしさのイメージはあまり含まれていません。
しかし研究員は「肌に潤いがあって手がよく動く」とイメージしています。

何が何を意味するかというのは言葉に置き換えた段階で変わってしまうので、本当に消費者の言葉になっているかどうかはしっかりと検証しなければいけません。
実際の対談動画はこちらです。
杉山さんの実体験や具体的な考え方等より詳しくお話いただいているので、ぜひ記事と併せて御覧ください。

https://youtu.be/qV58ntUpcrE
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