イベント集客施策の課題分析から見えた、シニア向けビジネスの収益化ヒントと具体的な改善策
株式会社UniEvoは、シニア向けの見守りサービスをメインとするIT企業です。東日本橋に本社を構え、地域住民を対象としたオフラインの交流会「いきいき交流会」を実施することで、高齢者の健康面や孤独の解消に貢献されています。 今回は、「シニアが心地よくつながれる場所づくり」をテーマに、地域密着のリアルな交流イベントである「いきいき交流会」の企画・運営、デジタルの力を活用したオンラインコミュニティ「縁ジョイ生活」の開発・運営、シニアのサポート活動、そしてシニアインフルエンサーのイベント運営やなど幅広い業務を担当されている、代表取締役の狩俣様に、今回初めてリサーチを実施されてみて、その活用方法と効果について詳しくお話を伺いました。
今回の調査テーマとなった「いきいき交流会」について教えてください。
当社は、ITと地域のつながりを通じて高齢者の安心と心地よさを支える企業です。シニアの方々の「やりたい」を形にし、地域と人が笑顔でつながる社会の醸成を目指しています。その中核である「いきいき交流会」は、シニアがリアルなつながりを通じて共助コミュニティを形成することを目的に、地域共生型の社会基盤づくりの一環であり、参加継続率や地域内での共助関係増加を中長期的なKPIとしています。
どのような目的から、今回のリサーチを実施されましたか?
今回のリサーチは、単なる集客施策の改善にとどまらず、「いきいき交流会」という活動を通じてシニアの「本質的なニーズ」を再定義し、事業の方向性を見つめ直すことを目的に実施しました。
現代、シニアといっても生活スタイルや価値観、デジタルリテラシーも多様化している中、「シニアが本当に求めるものは何か」を一から見つめなおす必要があると考え、これが大きな動機となりました。
普段、交流会で参加者のリアルな声は聞くことが出来ていますが、Webアンケートを活用したのも、シニアの多様化が進む今、日常の中でデジタルを自然に使いこなしている層も確実に増えています。サービスの成長・拡大を見据えるならば、リアルに会えるシニアだけでなく、デジタル空間を活用しているシニア層の価値観・行動様式を理解することが不可欠です。
そのため今回のリサーチでは、「リアル」と「デジタル」を横断的に捉え、シニアの多様な暮らし方・つながり方を包括的に把握することを目指しました。
主な調査テーマは、以下の2点で表面的に「集客の課題」を捉えるのではなく、なぜ人が集まるのか/なぜ集まらないのかという、より深い心理的・社会的背景を明らかにすることを意識しました。
- 1. リアルイベントの評価と内容へのフィードバック
実際に交流会に来てくださっている方が、イベントの内容にどれだけ満足しているのか、改善すべき点はないのか、といったイベント自体への評価を知りたい。 - 2. 興味層の意識調査と潜在ニーズの把握
「興味はあるが参加しない層」や「イベントを知らない層」が、交流会に対してどのような意識を持っているのかを調査したい。
Surveroidをどのように活用し、課題解決に臨みましたか?
イベントの全体評価と不参加層の意識を把握するため、スクリーニング調査と本調査を実施いたしました。
【スクリーニング調査】
まずは、Surveroidの「拡張属性*」機能を使い、配信先を東京都の台東区・中央区とその周辺に絞り込み、そして年齢は55歳以上の方を指定して、認知度やイベントへの興味の有無といった全体的な意識を問う調査を行い、本調査のターゲットを明確に絞り込みました。
その結果、「交流会に興味がない人」が市場全体として多いという、予想外の全体感を把握できました。また、行政サービスとの比較や、広域からの参加者の存在も確認できました。
*拡張属性とは、例えば、「市区町村(一部)」「子供の年齢」「住宅保有」「ペット有無」など、より詳細な条件からモニターを絞り込むことができる機能です。
【本調査】
スクリーニング調査の結果をもとに、「地域のイベントに興味がある層」を主なターゲットとして本調査を行いました。
特に「興味はあるが参加しない層」に対しては、「参加したいけど仲間が見つけられない」という潜在的なニーズに着目し、サポートがあれば参加に繋がるのではないか、という仮説を立てて深掘りを行いました。また、イベント内容への具体的なニーズ(参加しやすい曜日・時間帯など)も調査し、今後のイベント改善に役立てることを目指しました。
調査結果のデータとリアルな声が一致したことで大きな納得に
調査結果はどのように活用され、どのような成果に繋がりましたか?
アンケートで見えた傾向を仮説に、実際のイベントでお会いしたお客様にもその後ヒアリングをしてみたところ、アンケート結果と同じような傾向があり、データとリアルな声が一致したことで大きな納得に繋がりました。データを起点にリアルな声と照らし合わせながら、次の施策を考える手がかりを得られたのが大きかったです。
・新規事業のニーズを発見、確信を得られた
そのリアルな声が聞けたのも、アンケートをもとに交流会の実施時間帯に夜の部を増やしたことでその際にお会いできたお客様でした。その方とお話する中で、新たな新規事業のニーズを見つけることができたのが一番の発見です。
そのお客様は普段から趣味に奮闘されている方で、チラシ制作を手作りでやられていました。そこでそのサポートをご提案したところ、その費用としてマネタイズすることができて、今後の新規サービスを考えるうえで大きなヒントになりました。アンケート結果からサポートを必要とする人が多い印象にあったので、その仮説が事実となり確信を得た瞬間でもありました。
・集客施策であるポスティングの改善策も見つかった
また、アンケート結果をもとに、実際にチラシのポスティングをしばらく止めてみたところ、昼間開催の新規会員は減少しましたが、アンケートの結果からもチラシを見る方が一定数いたことや改善策についても具体的な意見を得られたことで、今以上に会員を獲得できる可能性がチラシにもあることがわかりました。内容についても「色々書きすぎている」「開催日が合わない」といった意見もあったため、今後はデザインやイベント内容など、どの要素が改善のポイントとなるのかをさらに深掘りして調査する必要性を認識しました。
・新たなターゲット層の発見
そして最も大きな発見は、イベント開催時間の追加が、新たなターゲット層の発見に繋がったことです。これまで交流会は昼間のみの開催でしたが、アンケートの回答をもとに夕方や夜の開催時間を追加したところ、参加者の層が明確に分かれました。昼間の時間帯の参加層は、主に無料での交流や健康維持を目的とし夕方~夜間の時間帯の参加層は、働いている方や、高齢でも趣味にお金をかけているなど、行動力と経済力のある方が多い傾向が見られました。
この層の違いが明確になったことで、今後の新規事業を考える上での大きなヒントを得ました。昼間の層は福祉的なニーズが主ですが、夜間層は明確な消費意欲を持った今後のターゲットになりうる層として捉えるべきだと判断できました。
このようにイベントの全体評価と不参加層の意識調査を起点としたリサーチが、結果として事業の収益化に繋がる新しい顧客層を発見し、データへの信頼性も確固たるものになりました。
今後、Surveroidでのリサーチをどのように活用していきたいですか?
今回の発見で、収益化を目指すべきターゲットのヒントをいただきました。今後は、シニア向けのサポートをマネタイズ化するために「いくらまでならお金が出せるか」の費用感や、具体的なサービス内容に関するニーズ調査を進めていきたいと考えています。
調査を終えてサポート面へのご意見やSurveroidに今後求める機能などございましたらお聞かせください。
Surveroidは、最初の課題設定から、「誰にどのような聞き方をしたら結果がちゃんと得られるのか」という調査設計の難しい部分をゼロからサポートいただけたので安心でした。
アンケート調査を終えた後は、担当の方にインタビュー調査も勧められ、データ分析後に交流会で実際のお客様の声を聞いてアンケートデータの裏付けができたように、インタビューをすることで、データの数字を信じすぎず、定性的にリアルな声を拾うことで仮説が事実に変わってくる、そんな意味がインタビューにもあるんだと感じました。
私たちのようにリソースが限られる中で、数字の裏にある本音を探るための定性的な視点や、次の課題を解決するための質問設計までサポートいただけるのは非常に価値があると感じています。
今後はやはり、リソースが限られると分析が大変です。クロス集計を出すにも、どんな要素を掛け合わせたらよいのか、時間をかけて考える必要がありました。今後は、分析も素早く自動化できるような機能に期待したいです。