定量調査と定性調査の違いと使い分け方について解説

16 2024.04

マーケティングリサーチ用語集

調査には大きく分けて「定量調査」と「定性調査」の大きく2つがあります。どちらの調査が優れているというわけではなく、場合によって使い分けることで効果を発揮します。解決したい目的によって調査手法を選択できるように本記事ではアンケートの種類から使い分け方まで解説します。
定量調査と定性調査の違いとは?それぞれの特徴と使い分け方について解説

定量調査とは

調査結果を数値データで集計し、統計的に分析する調査のことを定量調査といいます。得られた調査結果は様々な統計手法を駆使して分析することが可能なため、データをグラフ化して可視化することもできます。定量調査の代表的な手法としてネットリサーチが挙げられます。
多くの回答者のデータを得られるため、全体の傾向を把握することを強みとします。

定量調査の主な調査方法

定量調査といえばネットリサーチが主流になっておりますが、その他にも会場調査やホームユーステストなどの手法があります。目的に応じて適切なやり方を選択できるように、代表的な方法を下記にてご紹介します。

ネットリサーチ

ネットリサーチとは、WEB上で市場調査を行うリサーチ手法のことです。インターネット上で募集されているアンケートに回答してもらうので、回収完了までの時間が早く定量調査の中でも最も活用されている手法となっています。
また、統計的に信頼のあるサンプル数を取る場合、多くのサンプルが必要になりますがネットリサーチは比較的大量のサンプルを安価に回収することが出来る点が特徴となっております。

▼関連記事
ネットリサーチとは?効果的に活用する方法から実施の流れを解説

会場調査(CLT)

会場調査(CLT:Central Location Test)とは、調査実施対象者を特定の会場内に集め、その場でリサーチ対象者から商品やサービスなどの定量的なデータを取得するリサーチ手法です。実際に商品に触れてもらい感想を貰うことが可能なため、その場でリアルな反応を確認することができます。
ホームユーステストに比べて、短時間で一定のデータを取得することができ、簡単なインタビューなども同時に行うことが出来ることが特徴になります。

ホームユーステスト(HUT)

ホームユーステスト(HUT:Home Use Test)とは、商品の試供品やサンプルなどをリサーチ対象者の自宅に送付し、一定期間の日常生活の中での使用してもらい、その使用感などについて評価を得る手法です。
実際の生活の中で使用してもらうため、商品の購入意向や、競合商品との比較、商品のストロングポイントなどを諮ることが出来ます。
新商品を市場に投入する前のコミュニケーションプランの策定、受容性の測定、新しいニーズの発見などを得ることが期待されます。

郵送調査

紙のアンケート用紙を調査対象者に郵送し、返送してもらうことでデータを回収する手法です。宛先がわかっていれば安価に大量のアンケートを送付することが出来ますが、ネットリサーチなどに比べて回収率があまりよくない点や、一度印刷してしまうと修正するのが困難、アンケート結果をシステムに入力する手間があるといった点が挙げられます。
一方で、ネット環境がない方(高年齢層など)へのリサーチを行うには適している方法となっているので、現在でも広く行われている手法となります。

街頭調査

街頭調査とは、調査員が街頭に出て、路上でインタビューやアンケートを行う手法です。
調査対象者の属性がはっきりしている場合、該当する人の多いエリアや施設に赴いてリサーチを行います。
テレビや雑誌などの企画で行われることが多い手法です。

来店者(来場者)調査

経営する店舗に来店したお客様や、イベントなどで会場に来た方に対して、その場でアンケートを行う手法です。アンケートURLをQRコード化し、読み取ってもらうと回答者に負担をかけることなく効率的にデータを集めることが出来ます。
利用(体験)後の生の意見を聴取でき、今後の施策に活かすことができるでしょう。

電話調査

電話調査とは、対象となる人に電話をかけてヒアリングやインタビューをする手法です。民間企業だけでなく、自治体や政府が行う世論調査でも使用されています。
定量調査と定性調査の違いについて

定性調査とは

定量調査のように数字ではなく、言葉によって消費者を理解し、分析する調査手法です。
代表的なものとしてはグループインタビュー(FGI:フォーカスグループインタビュー)やデプスインタビューが挙げられます。
1人または少数の意見を深く読み解いていくため、数値では得難い感情、行動原理を把握できるという特徴があります。

定性調査の主な調査方法

定性調査の代表的な方法を下記にてご紹介します。対面での調査になるので昔から主流の手法から、現在はオンラインを使った手法も浸透しつつあります。

グループインタビュー(FGI)

グループインタビュー(FGI:Focus Group Interview)とは、6名程度の少人数のモニターに対して、モデレーターがインタビューを進行する形式のリサーチする手法です。
ヒアリング項目に制限がないことから、アンケートでは得られにくい自由な発言や感想といったデータを収集することが出来ます。また他者の意見への共感や気付きから、発想・視点が広がる「グループダイナミクス」が期待されます。
ただ声の大きいモニターの意見に流され、自分の意見を正直に言えなくなってしまうなどの弊害も起きる可能性があるので、その点は注意が必要となります。

デプスインタビュー(DI)

デプスインタビュー(DI:Depth Interview)とは、モデレーターと調査対象者の1対1で構成される調査手法です。
モデレーターとの対談形式になるので、じっくり意見を聞くことができ、商品の購買行動や態度変容などカスタマージャーニーを深堀り、調査主体が想定していない意見を引き出すことなど、新しい仮説を発見出来る可能性があります。
グループインタビューと異なり1人ずつ実施するため、周囲の意見に流されるなど本来の意見と異なることを言ってしまうなどのリスクは軽減されます。
また個人のセンシティブな事柄も話しやすくなるなども期待できます。

MROC(Marketing Research Online Communities)

MROCはMarketing Research Online Communitiesの頭文字を取り出したもので、ソーシャルメディアを活用した新しいリサーチ手法です。
オンライン上のコミュニティにモニターを集め、クローズドの環境で参加者はどこからでも自由に投稿をします。期間は1週間以上から1年程度まで続くこともあり、従来のリサーチ手法と比べて長期間行うのが特徴の一つです。
コミュニティ内の進行役は気になった投稿に対してリアクションをしたり、トピックを投稿したりして、インサイトの深堀をします。

エスノグラフィー調査(行動観察調査)

エスノグラフィー調査とは、モニターの行動を観察しながら、生活スタイルや思考などの質的なデータを収集するリサーチ手法のことです。インタビューなどの調査では言語化されない無意識な行動を観察することで、通常のモニター調査では表に出てこない新しいヒントや気付きを得ることが最大のポイントと言えるでしょう。「言葉」や「数値」から分析するのではなく、「行動」を分析するため、なぜその行動をとったのかを目の前で確認することが出来ます。

ワークショップ

抱えている課題に対して調査を行った結果をさらにブラッシュアップをする際に行われます。新規事業や商品の開発時に最適で、参加者はブレインストーミングの形でアイディアや知恵を出し合い、ワークショップの目的に沿ったゴールを導き出します。
参加者が事業担当者に限らず、生活者や外部の専門家やマーケター、他部署の人など様々な視点から意見を貰える点が特徴の一つです。ワークショップの経験豊富な人材を抱えている調査会社もあるため、効果的なワークショップにするために問い合わせてみるのも良いかもしれません。

定量調査と定性調査の違いについて

数値データによる分析を行う『定量調査』は、人数や比率、統計的傾向などの『量』を把握する調査手法です。一方で、『定性調査』は、言葉や感情、質的な側面にフォーカスし、数字では表現しきれない受容性や感情などの『質』を捉える調査手法です。人々の意見や経験、行動の背後にある理由を理解するのに役立ちます。

得られる情報が異なる

定量調査と定性調査では、得られる情報が異なります。定量調査は数字を出して統計的に分析するのが主な方法ですが、定性調査の場合は対象者の回答を元にした情報を分析するのが基本です。そのため、定量調査の場合は統計的に信頼できる回答数を確保することが重要になります。一方で定性調査の場合は、ユーザーの感想や意見、または絵や写真など文字以外のものを使用して情報を取得するため、それぞれの回答により、得られる情報の内容が異なります。

回答方法が異なる

定量調査と定性調査では、回答方法が異なります。上記でも紹介しましたが、定量調査の場合は数字など目に見えるデータを取得できるため、用意した選択肢を元に分析します。一方、定性調査の場合はインタビューなどで相手の声を聞いて情報を得るため、明確に回答されている内容ではありません。
例えば「あるドラマは面白いと思いましたか?」という質問に対し、定量調査では「はい」「いいえ」などの選択肢を設けることで回答がはっきりしますが、定性調査の場合、面白いと思った理由の深堀が出来るため、回答者の生の意見を一つ一つ確認していきます。

調査対象のサンプル数が異なる

定量調査と定性調査では、対象となるサンプルの量が異なります。定量調査の場合はある程度信頼に足る数のデータの取得が必要になるため、対象者は100人以上になります。回答数が多いほどデータに関する信頼性が強まるため、100人以上が目安となり、場合によっては数万という数字になる場合もあります。一方、定性調査は回答の質に重きを置くため、数人からの回答から分析を行うため、対象の数が大きく異なります。
定量調査と定性調査のメリット・デメリットを比較

定量調査と定性調査のメリット・デメリットを比較

定量調査のメリット

定量調査のメリットは数値でデータを取得するため、集計や分析が行いやすいことです。さらに、数字という大きな根拠を以て説明もできるため、主張する際に説得力が増します。商品やサービスの開発・改善などを進めるにあたって、様々な意思決定が必要になりますが、統計的に処理したデータを元に施策を進めていくことが出来ます。

定量調査のデメリット

定量調査のデメリットは数字のみのデータになるため、細かいディテールを描くことには向いていません。また、サンプル数もたくさん必要になるため、対象となる人の条件によってはサンプルを集めるのが難しいケースもあります。

定性調査のメリット

定性調査のメリットは、対象者のインタビューによる回答から新たな発見やアイデアを得ることです。定性調査は理由や考え方について「なぜその選択をしたのか」という点をその場で深掘りをすることが出来るため、質問者自身も予想しなかったニーズの発見に役立ちます。

定性調査のデメリット

定性調査のデメリットは回答者の質問によって深い内容を把握できますが、大きな意思決定をする場面では、データとして確信を持てないため向いていません。また、ターゲットの選定も苦労する他、質問者のトークスキルなども重要です。
定量調査と定性調査を使い分けるポイントとは?

定量調査と定性調査を使い分けるポイントとは?

意味のある意思決定をするために、定量調査と定性調査を有効的に使い分け、その場に必要な情報を得ましょう。
上記で紹介したメリットとデメリットを理解した上で、それぞれの活用シーンをご紹介します。

まず、定量調査の場合は以下のようなケースで利用できます。
・規模や割合、人数など量的な把握がしたい
・数字を用いて客観的な証明がしたい
・仮説の検証
・全体を俯瞰して傾向を把握
・2つ以上のものごとを対等に比較


一方、定性調査の場合は以下のようなケースです。
・ターゲット像を具体的に把握したい
・仮説を構築したい
・具体的な改善案の抽出がしたい
・意識の細かい特徴を深掘りしたい
・流行の収集をしたい


定量調査では主にデータや数字を収集して分析するシーン、定性調査はインタビューなどで細かい部分を分析したいシーンに活用できます。ただ、定量調査と定性調査は併用する場面もあり、例えば仮説を構築して検証する際は、定量調査を用いて全体的な数字を把握し、定量調査の結果から新たに生まれた課題に対して、定性調査で深掘りするといったサイクルもポイントとして覚えておきましょう。

まとめ

定量調査と定性調査の違いについて紹介いたしました。定量調査は、数字を元に分析を行いますが、定性調査の場合は対象者の言葉から理由や心理を分析するため、活用シーンが異なります。それぞれの調査方法によってメリットとデメリットがあるため、どのような目的で調査をするのかを明確にして選択する必要があります。調査方法がぴったりハマれば、業績をアップさせることにもつながるため、ポイントを押さえて効果的に活用しましょう。
61 件

Related Contents