ブランドをどうとらえるか

30 2024.01

編集室メンバーコラム

ブランドをどうとらえるか
バイロン・シャープの「ブランディングの科学」 がベストセラーになってから、ブランドやブランディング、またそのためのマーケティング・リサーチをどう考えていくかの議論が盛んになっていると思います。

InSites Consultingというリサーチ会社が、ブランドについての考え方を「5つの信仰」としてまとめた、わかりやすい資料をだしているのでご紹介します。

InSites Consultingは、もともとベルギーのマーケティング・リサーチ会社(今は幅広く各国で事業展開しているようですが)で、この会社は、オンライン定性調査などで意欲的な取り組みや論文をたくさん出していて、私自身は定性調査には門外漢なものの、以前より「若いイキのいい会社」として少し注目していました。

この資料(”BRAND RELIGIONS”)はInSites ConsultingのYoutubeチャンネルhttps://www.youtube.com/playlist?list=PL1kLoPtirCp0SD3sIB6LnVtAN4jEbxqUo で解説を視聴することができますし、英語のみにはなるのですがIssuuというアプリ(電子カタログ共有ツール)で読むことができます。

“BRAND RELIGIONS”では、ブランディングに関する考え方を、次の5つの信仰として整理しています。

1.古典的信仰
2.インフルエンサー信仰
3.リレーションシップ信仰
4.顧客体験信仰
5.浸透信仰

それぞれの教義をかんたんにまとめると、「古典的信仰」の協議は、STP戦略に基づく差別化、認知~購入~ロイヤリティというファネルを進めることでブランド・エクイティを高めていくというもので、これがいわゆる「コトラー流」、一般的なマーケティングの教科書流の信仰になります。

「インフルエンサー信仰」の教義は、「消費者のクチコミがブランドをクラッタ―化から救う」というもので、マーケットは人々の中からでてくる、というWEB/SNSマーケティング的な立場です。

「リレーションシップ信仰」の教義はBRAND=”LOVEMARKS“で通じるようなら、まさにそれです。ブランドは個々の消費者の感情=愛着にあるということで、その愛情関係を永続させるというのがブランディングであるという立場になります。

「顧客体験信仰」は、消費者の体験した記憶が全てだ、という立場です。一方通行ではなく、顧客との相互関係、ブランドに関わる個々の特別な体験を重視します。

「浸透信仰」が冒頭に示したバイロン・シャープ、あるいはオーストラリアのアレンバーグ・バス研究所を教祖とする信仰で、その教義は、ファンなどよいから、ライトユーザーでいいので顧客を増やせ、というものです。セグメンテーションやターゲティングなど重要でない、とにかく多くの消費者に届くようにせよ、という立場で、マス・マーケティングの復権といえそうです。

マーケティング担当者は、与えられたブランドの状況や環境に応じて、これらのいずれかの信仰を選択、あるいはMIXして仕事をする必要がある、というようにまとめられています。

リサーチャーの立場としては、プロとしてリサーチ業に関わるなら、これらの「信仰」を知らないという選択肢はないと思うのですが、一方でどの「信仰」とも距離をおいてリサーチを設計しておくことが重要ではないか、というようなことを考えたりしています。



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