2020年11月27日 更新

評定尺度(段階尺度)の選択肢と位置

gettyimages (1529)

『行動計量学』(日本行動計量学会https://bms.gr.jp/の学会誌)の最近号に、アンケートの作り方について参考になる論文が載っていたのでご紹介します。

論文は『アイトラッキングによる自記式質問紙への回答行動の分析-Web調査用質問画面の場合-』(浅川・岡野・林 2020)というもので、以下のような実験をしています。

Webでのアンケートで、評定尺度の選択肢の並べ方について、次のA、Bの2種類で実施したときどのような影響があるかを調べています。(論文ではマトリクス形式の質問ですが、ここでは単問の形式で表しています。

(Aタイプ)
1 当てはまる
2 やや当てはまる
3 どちらともいえない
4 やや当てはまらない
5 当てはまらない

(Bタイプ)
1 当てはまる
2 やや当てはまる
3 やや当てはまらない
4 当てはまらない
5 どちらともいえない

要は、「どちらともいえない」という回答選択肢をどこに置くかという違いです。実際のアンケートではAタイプを見かけることが多いですが、Bタイプもたまにあります。Bタイプの場合には、「どちらともいえない」ではなく「わからない」という表現が多いように思います。

実験の結果、大きく3つのことがわかりました。

(1)    Bタイプの場合、「どちらともいえない」を一番ネガティブ(「当てはまらない」)と誤認して回答してしまう人がいる
(2)    「どちらともいえない」と回答する人の比率は、AタイプよりBタイプの方が少なくなる

(1)(2)の結果からいえることは、アンケートの回答者は、選択肢の言葉だけでなく、その位置によって意味を理解しているということだと思います。その結果、(1)のように一番下(論文では右)にある「どちらともいえない」を一番ネガティブと誤認してしまうということが起こっているようです。

また、(2)の結果から考えると、誤認しなかった人でも、Aタイプでは「どちらともいえない」をポジティブ~ネガティブというグラデーションの中の「中間的」な意味と理解しているのに対し、Bタイプでは、グラデーションからは「外れた」という意味で理解しているように思います。

もう一つは、誤認のメカニズムについて、アイトラッキング(視線計測装置)によって調べた結果です。

(3)    誤認をした人の視線の動きを見ると、選択肢の言葉部分への視線の動きが少ない

論文の実験ではマトリクス形式の設問で、選択肢の言葉と、入力フォーム(ラジオボタン)には距離があります。回答者の視線は言葉とボタンを行き来するのですが、アイトラッキングの結果によって(3)の事実が明らかになっています。

アンケートの選択肢を作る際、言葉だけではなくて、その配置、位置についても考慮することが必要なのが改めてわかります。

「どちらともいえない」を中間的な意味として分析するのであれば、中間に置くべきであるし(評定尺度はポジネガ同数である必要はないので、「真ん中」とは限りませんが)、そのグラデーションから外れた意味として分析するのであれば外れた位置に、たとえば、他の選択肢とは明確に距離を置いて、回答者に意味を理解する手がかりを置かれた位置からも与える、といった工夫が考えられます。

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